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週刊Neue Fahne

2024年10月28日号

若手社員に真摯に向き合う-20-“成長の芽が摘まれる”と認識させない

いつの時代であっても部下が望む上司像は、単に「優しい上司」「叱らない上司」ではない。部下である自分の行動をよく観て、話を聴いて、時に逡巡している事柄に対して的を射たアドバイスをしてくれる上司である。若手・新人にとっては自分の誤りに対して、適時的確に「ピシッと叱ってくれる」という上司の行動もことも加わるだろう。
  そもそも理想の上司像などは「絵に描いた餅」に過ぎない。上司が若手・新人と接する場合に追及すべきことは、若手・新人と同じ価値観を持つことではなく「この上司はこれを大事にしているのだな」と理解させることである。そのためには上司自らが若手・新人に対して自己開示することである。もちろん「完璧である自分」を装う必要はない。この種の無理な装いこそ、部下(とりわけ若手・新人)は直ぐに見抜くものである。

 若手・新人に限ったことではないが部下は上司の「情報伝達能力の欠如」に対してシビアに反応する。つまり、入手した情報を適宜に部下に下ろさない上司には不信感を抱くことになる。これは「必要な情報を必要な人にもたらしていない」とことでもある。また、部下が新しい価値の可能性を見つけても、上司が企画推進・増幅力を身につけていなければ、せっかくのチャンスも潰してしまうことになる。この種の上司は、やる気のある部下からは、「頼りにならない上司」に映るのは必定である。「頼りにならない上司」の最たるものは、“上通性のない上司”である。
  上通性とは自分よりも上席者に対して、きちんと意見をいい、獲得すべきものをしっかりと獲得してくることである。言い換えれば、目標達成のための必要な予算を獲得すること、仕事をしていくうえで絶対に必要なルールを作ることである。こうしたことを実現するためには、上司の上席者と交渉し認めさせていく“組織内でのパワー”の保持が不可欠である。“組織内でのパワー”がない上司などは、乱暴にいえば部下にとって存在価値がない。

  部下の育成において一時期に「褒めて伸ばす」式の手法が喧伝された。しかし、実際には「褒めることによる効果はあまり大きいわけではない」という研究もある。まして部下のご機嫌をとるために褒めたとしても何の役にも立たない。無意味に部下を褒めたところで、賢い部下には体よくあしらわれるのが関の山である。のみならず、強かな若手・新人には御し易い上司として上手く使われることになる。つまり、舐められるだけである。
  そもそも部下は嫌いな上司や自分が評価していない上司から褒められたとしても嬉しいと思わない。まして上司と部下の“日常の関係性”が悪ければ、上司の褒め言葉も上滑りすることになる。上司が部下を褒める目的はあくまでも「部下に期待する“行動”を繰り返してもらうため」であり、組織にとって好ましい行動を増やすためである。部下は自らの行動が上司から褒めてもらって「嬉しい」と感じたならば、「同じような行動をもっとしよう、次もやろう」とするのである。上司はあくまでも「部下の行動の是非」に焦点を当てなければならない。

  こうした行動に焦点を当てたフィードバックが的確に機能するためには、職場での何気ない対話や雑談を含めた、上司と部下の間で“良好な関係性”が形成されていなければならない。いくら上司が無媒介に部下を褒めたところで部下から“何か裏があるのではないか”と勘ぐられて警戒されるだけで終わる。組織において上司が部下との関係性を構築するための起点となるは、あくまでも「相手に関心を持つこと」である。上司が部下に関心を持ち、部下一人ひとりに合わせた対応を示すことで部下の行動変容が促進される。
  部下に興味関心からこそ、“褒める”あるいは“叱る”という行為が発生する。重要なことは上司が部下一人ひとりの行動を見守り、適時・適切なフィードバックを与えることである。同時に部下一人ひとりが何に対して喜びを見出すのか、何を望んでいるのかについて把握することを厭ってはならない。敷衍するならば部下の行為・行動に対して興味や関心を持つことができない上司は、そもそも良質な“部下との関係性”を構築することができないということである。結果的にこの種の上司にとってマネジメント業務が負担になる。そして、この種の上司の下では“成長の芽が摘まれる”という認識に至った部下から順番に去っていく。

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