『組織変革論』 版元:中央経済社
『組織変革論』はステレオタイプに喧伝されている「Z世代論」に対して、『Z世代化する社会:お客様になっていく若者たち』(東洋経済新報社)で、大人(旧世代)からするならば異形に映る「Z世代」の諸相が、実のところ社会の動きをより敏感に捉え、反映しているに過ぎないという意味で社会全体に及んでいると指摘する著者による、学生を対象とした組織変革に関する「教科書」である。 |
『CHANGE 組織はなぜ変われないのか』 版元:ダイヤモンド社
『企業変革力』『リーダーシップ論』などの著書で知られるジョン・P・コッターの著書である。コッターは脳科学の知見から人間は不安や脅威を感じると、自己防衛に多くのエネルギーを割かれてしまい、士気が下がり、生産性が落ち、目の前の課題に目が向きにくくなる「生存チャネル」と呼ばれる生存本能(メカニズム)とが備わっていると説く。「生存チャネル」が強まれば思考が鈍り、視野が狭くなり、チャンスを逃す可能性があるとのことだ。 |
『中小企業の人材開発』 版元:東京大学出版会
企業にとって人材は経営資源の中で唯一の生物である。そして人材は少子高齢化問題を論じるまでもなく、人為的に再生産することができない。従って、採用した人材に対する育成の成否が企業の栄枯盛衰を決する。これまで企業の人材開発に関する学説や言説はあまた存在するし、書店のビジネス書コーナーにも人材開発を題材にした書籍が溢れている。 |
『逆・タイムマシン経営論 ―近過去の歴史に学ぶ経営知―』 版元:日経BP社会
「旬の言説」に飛びつきたくなることは、ある意味で人の「性」ともいうべき思考方法なのかもしれない。本書は近過去を振り返り、当時メディアで取り上げられた「旬の言説」が人びとに思い込みを誘発し、思考や判断のバイアスとなってきた経緯を「同時性の罠」と呼び3つに収斂されるという。同時に「同時性の罠」を回避し適確な判断にもとづいた意思決定に向けた思惟と考察を与えてくれる。 |
『若者保守化のリアル―「普通がいい」というラディカルな夢』 版元:花伝社
時代の変化が激しくとも人は、自分の生きてきた時代を正当化したがるのかもしれない。この正当化は往々にして自分よりも歳の若の者に対して、時代変化を顧みることなく自分の価値基準で対応しようとすることにつながる。そして、いつの時代にも繰り返される"大人"による「最近の若者は…」というステレオタイプの批評は、自分の生きてきた経緯や社会背景を無批判かつノスタルジックに受け入れることにもつながっている。これは自らの現状維持バイアスに結果的に通底していることなのかもしれない。あるいは、現時点で安全地帯に身を処すことができている"大人"のエゴイズムと捉えることもできる。 |
『シルバー民主主義の政治経済学』 版元:日本経済新聞出版社/著者・島澤 諭(しまさわまなぶ)
「シルバー民主主義論」とは、一般的に"既得権を守りたい高齢者が政治プロセスを支配することで、必要な改革の邪魔をしている"とする論調の象徴的表現だ。要するに選挙での投票行動などから高齢者に政策決定の主導権があり、政党はあくまでも高齢者に選ばれる"客体"に過ぎなくなり、「政治は高齢者の意向に反した改革を実行できない」というものだ。 |
『七つの会議』 版元:日本経済新聞出版社/著者・池井戸 潤
小説の登場人物たちが「組織の理論」との狭間で葛藤するさまに会社勤めをしている読者は、自らの職場実態を投影しヒリヒリとした臨場感を持ちながら「サラリーマンの悲哀」を共感するかもしれない。しかし、共感だけでは「組織」と「個人」を単純に"二項対立"という位置づけに終わってしまう。 |
『渋沢栄一 1算盤篇 2論語篇』 版元:文芸春秋/著者・鹿島茂 若き日、徳川体制に疑問をいだいた尊王攘夷運動。ひょんなことから水戸家に仕え徳川慶喜の下で幕臣となり、慶喜の弟の従者として第二帝政下のフランスへ。そこで接したフランス流資本主義とも言うべきサン=シモン主義の経済思想を学び、個の利益が公の利益につながるシステムこそ貴重だと悟る。そのパリで明治維新の報に接して帰国。その後実に500社を超える会社の設立に関わり「日本の資本主義の父」と称される渋沢栄一。高い倫理観ある「経済的人間」として資本主義黎明期の経済人への威光・警鐘は今に生きている。 |
『なぜ「改革」は合理的に失敗するのか』 版元:朝日新聞出版/著者・菊澤研宗 組織はあくまでもその存在そのものに価値があるのではなく、組織による成果に価値があり、あくまでもその「成果」を通じて社会に貢献するものである。ドラッカーが喝破するように組織は「目的」ではなく「手段」だ。しかし、組織を構成する個々が「合理的に判断」していると思っていても、全体として「不合理」となり、それが対外的には「不条理」となることがある。本書は過去の名だたる企業組織の「失敗事例」を通して「自律的人間」による批判的議論に基づくマネジメントの重要性を説く。今日の原発事故は典型事例となるだろう。 |
『社会起業家の教科書』 中経出版 社会のさまざまな問題解決に貢献していくという働き方を思考する「社会起業家」と呼ばれる若者たちが注目されている。「ボランティア活動と何が違うのか」との疑問を持つ人はいまだに多い。本書はこうした疑問に答えてくれる。しかし、「教科書」と銘をうってはいるが、単なる知識やブームの紹介ではない。実践者のインタビューを通し魅力と苦労から新たな「働き方」の胎動を掴んでいく端緒となる。 |
『愛国消費』 徳間書店 『下流社会』の著者・三浦展が、最近顕著になり始めている新しい「消費の波」について分析する。新たな「消費の波」のキーワードは、「愛国消費世代」の台頭ということだ。アンケート分析を通して見えてくる「日本に生まれて良かった」「神社やお寺に行くとなごむ」「夏は浴衣を着て花火を見に行く」など日本志向や"日本ブーム"の現状の背景には、どのような心理状況があるのか。ますますグローバル化が進行している中で、矛盾するかの「日本への回帰」とも思われる現象は、今後の消費行動にも変化をもたらすだろう。 |
『広告』10月号 株式会社博報堂 古今東西、いつの時代も大人にとって若者は、理解不能な存在なのかもしれない。特にかつての高度成長時代を経験した日本の組織人・企業人にすれば、自分と比較するあまり仕事に対する最近の若者の価値観の変容についてなおさらだ。しかし、「消費」「会社」「働き方」に対する若者の価値観を知らずに自分基準だけを振り回しても意味がない。 『広告』10月号の特集「2010年代の若者論」は、会社の経営者・幹部に大きな示唆を与える。 |
『エクゼクティブの悪いくせ』 日本経済新聞社 日経プレミアシリーズ エクゼクティブとは経営者やトップリーダー層を指している。日本の経営者やトップリーダーには5つの悪い「くせ」があると説く。1.軽薄な「現場主義」2.「長期的視点」の不在3.独自の工夫へのこだわり4.企業は人なり、で思考停止5.率先垂範の悪循環の5つとのこと。ひとは一つの成功体験を積むとどうしてもこの「成功」に固執しがちなものだが、これからの人材育成という視点で自らのマネジメントスタイルを見直してみるのも必要だ。 |
『部下を自立させる上司の技術』 PHP新書 中小企業ではトップの影響力が強すぎる傾向がある。しかし、ともするとこうしたトップの下では人は育たない。もちろんトップの価値観や見識を否定するものではないが、あまりに影響力の強いトップの下では社員は自らの思考を停止して、トップに依存し過ぎる状態に陥るものだ。その結果、なんでも言うことを聞く部下の存在はトップを裸の王様にしてしまう。トップの役割を果たし続けるため、まず部下を自立させるという発想が必要だ。 |
『ダメになる会社』――会社はなぜ転落するのか? 筑摩書房 ちくま新書 マスコミにもてはやされ賞賛されていた企業や経営者が一夜にして、凋落するケースがあまた発生している。なぜ、このようなことが引きも切らずに起こるのか。なぜ、会社とはかくも簡単にダメになってしまうものなのか。その原因は一重に経営者の問題。若者の離職率を嘆く経営者が多いが、中小企業では会社≒経営者の側面が強い。会社を辞めると言うことは、社員が経営者を取り替える行為の一つとも見て取れる。思い当たる方はご一読。 |
『社会起業家になる方法』 アスペクト 社会起業家とは社会が抱えている課題の解決のために、いわば「社会貢献」を生業・仕事として行っているひとなのだが、従来の仕事観からは「ボランティアで喰っていけるのか」という素朴な疑問や本当に事業として成立するのかという疑問も生じてくる。しかし、着実にこうした事業に乗り出す若者が20代〜30代を中心に増加しているという。働く目的や意味を再考したり、事業としての成否についての疑問を解く手かがりとして好書の一冊。 |