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週刊Neue Fahne

2024年09月30日号

若手社員に真摯に向き合う-17-公正性に基づいた部下と毅然とした関係性の維持

最早、言い古された感もあるが“部下を叱れない管理職”が増えている。むしろ“叱れない”のではなく、“叱りたくない”というのが本音なのかもしれない。その理由は、「叱ったら人事部にパワハラを受けたと相談されるのが怖い」「叱ったら部下が出社しなくなるのではないかと心配だ」「叱ったことで、反抗的な態度を取られるのが嫌でストレスになる」などという話が、都市伝説化して拡散しているからなのかもしれない。
  確かに誰しも「周りから嫌われたくない」との思いや「周囲との間でつまらない対人関係上の煩わしさを発生させたくない」という心理が働くものである。企業組織で部下を持つ管理職とてそれは同様である。しかし、企業組織は共通の目的をもった者による協働が前提であり、単なる個人の集合体ではない。このため、組織内で対人関係を巡る一定の軋轢が日々発生することは覚悟しなければならない。

  組織で働くうえでの決まりごとや業務手法に反する行動や組織の方向性や組織目標の合理的達成に反する行動に対し、適時適切な矯正(正常な状態にする)を施していくことは管理職の役割である。今日では価値観の多様性が強調されるが、あくまでも共通の目的の下での協働が問われなければならない。仮に組織に属していなくとも社会生活を営む以上は、他者との関係性を気にする必要がない者は“世捨て人”でもない限り、基本的に皆無である。
  まして企業組織には個別の流儀やルールも存在している。当然ながらこの組織の流儀やルールは構成員の諸行動を規定することにもなる。往々にしてこの流儀やルールに対して若手・新人の側が多様性を対置し、蔑ろにしてしまう風潮が存在している。こうした風潮に対し管理職が動揺的な姿勢を取ったならば組織のガバナンスは崩壊する。個々の組織に固有に存在している流儀やルールは、ある意味で当該企業組織の成り立ちの一部でもある。

  もちろん流儀やルールは“生きもの”であり万古不易とは限らない。社会や時代変化にそぐわなくなり陳腐化してしまうこともある。これらに対して常に精査を怠らず、恒常的な改善や改革を思考することは管理職の役割である。この“思考する行為”を管理職が遺棄して、「昔からのやり方」への無批判な踏襲を部下に押し付けることは論外である。問われなければならないことは、部下に対して流儀やルールに対する明確な説明を展開することができるか否かである。
  若手・新人に対して明確な説明を展開することができない管理職は、恐らく自らがその存在意義を理解していないことにもなる。仮に管理職が明確な説明を展開することなく、部下に対して「上からの指示だから…。昔からこうだから…」などという姿勢を取ったならば、一気に信頼を無くすことになるのは必定である。若手・新人に限らず部下は管理職の事大主義的な姿勢や忖度姿勢を敏感に察知するものである。

 いつの時代であっても若手・新人に限らず部下は、上司から見たならば基本的に我儘な存在に映るものである。上司の側が部下の自主性を尊重し過ぎれば、「自分は上司から放置されている」と“かまってもらう”ことを求めたりする。反対に上司からの適時の干渉に対しては、自主性を要望するものである。部下が管理職に求めるのは、過度な「優しさ」でもなければ、過度な「厳しさ」でもなく、公正性のある態度である。
  企業組織において管理職が部下と接する場合の公正性とは、単純化すれば是々非々でもある。誤った行動に対しては躊躇わず叱り、組織貢献に資する行動に対してはしっかりと褒めるということだ。部下は自分の行動をよく観察し、話を聞いて、なおかつ必要に応じて納得性のある叱責をしてくれる上司に信頼を寄せるものである。こうした管理職の姿勢が部下にも受け継がれ、組織性が育まれていくことになる。

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