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週刊Neue Fahne

2024年08月26日号

若手社員に真摯に向き合う-15-自らに施された指導の内省的な捉え返し

日本の企業において現場マネジメントを司る現役世代は、企業規模に関わらず景気後退期の一括採用で入社している。この世代が企業勤めを始めた時点で既に「失われた〇〇年」が始まっていた。しかし、高度経済成長期の雰囲気を色濃く残した上司・先輩に指導されてきた。このため軽重の違いはあるが、ある意味でプライベートと仕事の境界が曖昧にされ、上司からの急な業務の指示にも厭わず従うことが“習い性”になっていた。また、職場では察することが重んじられ“阿吽の呼吸”で仕事を行ってきた。
  これは経営と従業員の関係、従業員同士の関係性を「家族的関係」=“一家”であるかのように錯覚して解釈する弊害にも起因している。この弊害は時として上司からの理不尽な指示や要請にも耐えるという風土も形成してきた。こうした認識は上司と部下の適切なマネジメント上の距離感が失われてマイクロマネジメントを誘発してきた。また、組織や同僚を守るために非倫理的行為に手を染めたりする行為などコンプライアンス違反を誘発する危険性も秘めている。

  とりわけ中小企業においてはこの傾向が強く、経験値のみが重視されマネジメント手法の訓練や経験の蓄積が薄く、職務能力としてマネジメント力が未形成な上司による部下指導が展開されてきた。直截にいうならば今日の中小企業でマネジメントを司っている上司層は、自分より一世代前の上司からの指導の下で、右往左往しながら“生き残ってきた者”であり、残念ながらマネジメントの原理原則を十全に会得しているとは限らない。
  今日の若手社員は仕事の指示について、それを行う意味や具体的なやり方について詳しい説明を求める。こうした若手社員に対して「失敗しても構わないから…」「自分の思う通りやってごらん…」は通用しない。彼ら彼女らはこうした指導を「自分は放置されていると」とさえ捉える。これは言い方を変えるならば、彼ら彼女らが仕事について何かを理解していくためには、上司からの適切な“助け船”が必要になっているということである。また、求めているということでもある。

  仮に今日現場マネジメントを司る世代が“助け舟”を出す事を厭う態度や行動を示したならば、その瞬間に今日の若手社員は、自らの属している組織から距離をとるようになる。ただし、今日の若手社員はこの距離の発生を態度にあらわさないという一種の“強かさ”を持っている。“強かさ”とは表面的に反発を組織内で公言したりしないということである。まして、公然と反発をすることも強く自己主張することもない。このため現場の上司が若手社員の日常業務にあらわれる現象から若手社員の抱く“組織からの離感意識”を読み取ることが難しい。
  いつの時代にも、旧態依然としたマネジメントや労働文化に固執したがる年長者は職場にいるものである。しかし、働き方に対する価値観が変わり、新しい世代が職場に入ってくる中で現場マネジメントを司る世代も仕事に対する原理原則を堅持したうえで、自分たちの意識を変えていかなければならない。

  確かに今日の若手社員の行動に対しては一見すると「プライベートが第一で仕事はその次だ」と映る価値観を理解するのは難しい。しかし、以前は何時間も残業していた世代も今では基本的に定時退社するようになっているはずである。有給休暇も以前よりは消化するようになっている。子育て世代の就労にも寛容に対処するようになっているはずである。多くの企業現場で時代変化に伴う意識変化が涵養され始めている。
  上司世代はいつまでも“最近の若手社員は…”“自分が新人の頃は…”式の繰り言を繰り返していても始まらない。自らがこれまで企業組織で受けてきた指導・育成を内省的に捉え返して、今日の若手社員の思考や傾向、行動特性を理解し受容しつつ指導方法も時代に合わせて変容させていかなければならない。ただし、これは部下からのハラスメント批判を恐れて“若手社員にオモネル”という意味では決してない。

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