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週刊Neue Fahne

2024年08月19日号

若手社員に真摯に向き合う-14-権威勾配に注意を払い建設的に対峙する

上意下達の傾向が強い企業組織ではミスや「報告・連絡・相談」を怠る部下に対し、上司が厳しく叱責する傾向が強い。もちろん単純に叱責の善し悪しを論じても意味がない。ただし、今日では心理学的な見地から「怒鳴ったり、強く叱ったりする行為は部下指導においては原始的・短絡的な方法であり、それによって人が育つことはほとんど期待できない」といわれている。
  部下を叱ったり怒鳴りつけたりする指導方法は、部下の側に「上司から叱られたくない」という心理が働き、部下の“行動量自体を減らす”ことになる。つまり、部下は叱られることを恐れて縮こまり、仕事を抱え込み、いわれたことだけしかやらない「指示待ち」になる。結果的に失敗から学ぶ「経験学習」の機会を閉ざすことになる。

  この種の叱責手法の過度な運用が、組織内の同調圧力を高めて組織的犯罪を隠蔽する体質にもつながる危険性を高めることにもなる。そこで、上司の側は、部下を無限定に叱る行為が部下による仕事の抱え込み、ミスを隠蔽する心理を誘発する危険性を秘めていることを認識しておかなければならない。
「仕事を抱え込む部下」「仕事の遅れやミスを報告しない部下」の一般的な心理状況は次のようなものだ。
・「仕事ができない奴」と思われたくない自尊心
・「評価を下げられるのではないか」と思う不安
・「能力の不足を悟られたくない」と思う自己防衛
・「自分は一所懸命に仕事をしている」と思う自己愛
・「恥をかきたくない」というプレッシャーや羞恥心
・「怒られるのが嫌なので隠蔽したい」という逃避
・「自分の手柄にしたい」と我欲

  企業組織には上から下への指示を貫徹するため、一定の階層構造が不可欠である。これは組織統制の上からも必要なことである。同時に当然のことながら“権威勾配”が存在することになる。一方で階層構造は下(現場)からの意見や情報があがりにくくなる傾向に陥る弊害がある。この結果として、現場が抱える問題が放置されがちになり、新しく創造的な意見が集まらないなどの状況が生じる危険性もある。
  時には権威が強い立場の人間が傲慢になり、不正や粉飾などのコンプライアンス問題に発展する場合もある。適正な“権威勾配”は組織にとって不可欠であるが、極端にきつい(急角度)の“権威勾配”が存在するならば、組織の存続にかかわる重大な事象の見逃しにつながる危険性もある。

“権威勾配”がゆるい(低角度)場合は、往々にして、指揮命令関係が曖昧になり上司の指示が貫徹しなくなる危険性もある。この種の状況では上長の指示を無視する傾向、できない理由を並べ、やるべき行動をサボる傾向が発生し、結果的に組織のガバナンスが崩れてしまう。組織内の公式的地位が高い上位マネジメント層、特異なスキル・能力を有する者は、自分が意図しなくても、他のメンバーとの“権威勾配”がきつくなりやすい。
  組織内でこれらに該当する者は、自分のポジションや組織への影響力を自覚し、“権威勾配”の調整に自覚的に努める必要がある。企業組織における権威勾配は、部下とのコミュニケーションに大きな影響を与える。上司の側が部下との間に存在する“権威勾配”を自覚しつつ、部下の意見に耳を傾け適正な関係を築くことで組織全体の活性化につながる。上司は“自らの権威は企業組織から役割として与えられている過ぎない”ということを承知しつつ、健全な組織性の確立に向けて、部下と建設的に向き合っていかなければならない。

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