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週刊Neue Fahne

2024年08月05日号

若手社員に真摯に向き合う-13-虚飾を排し虚勢を張らない

 今年も各種の媒体から2024年新入社員の意識調査などが発表されている。ただし、結果はあくまでも調査主体の立場性に左右されるものだ。例えば転職媒体の調査によれば今年の新入社員は、“どこの会社でも通用するような能力を磨くことを指向し、終身雇用型組織を希望せず、新しいことにチャレンジできる環境を求める”という傾向が強いという結果になっているらしい。
 一方で教育・育成系の媒体によれば、今年の新入社員は従来と比較したならば“スキル習得や成長に対して意識が高く、上昇志向も増加傾向にある”とのことだ。さらには高い収入を得ることに対する意識が強くなっている傾向もあり、一概に“若者=出世したくない者が多い”と一括りにすることはできない”とのことだ。

 総じて2024年の新入社員に対する評価は一昔前の“トンでも新人”の跋扈を揶揄する傾向が影を潜めている。同時に一部の特長的な若者の層(「意識が高い」)に見られる過度な傾向に目を向け、今日の若者を“社会貢献意欲が強く、アントレプレナーシップがあり、海外に興味を持つ傾向が強い”が、一方で“超然とした正義には固執しつつ日常的な不合理に対しては目が向かわない”という捉え方も影を潜めてきている。
 何処の企業組織においても何時の時代にも“トンでも新人”や過度に“意識が高い新人”は入社してきたものだ。そして都度に現場の既存社員はこの種の新人に振り回され、時には右往左往していたものだ。これらの若手・新人は企業組織内において特異性を発してはいたが、阻害物や敵対物という扱いを受けていたわけではない。つまり、いちいち職場内で目くじららを立てる程でもなく、むしろ身の程をわきまえないが“憎めない奴”という程度に扱われていた。そして、本人たちも時間経過とともにいつしか組織内に同化していった。

 新入・新人の意識や振舞に対して敏感に反応をするようになってきたのは、“時間経過とともにいつしか組織内に同化”させることができていた“有形無形の組織力”の衰退の始まりと同期していると取ることができる。一言でいえば組織があらゆる面において余裕を失ってきたということである。この結果、最初から安定志向が強く、現象として「いい子」であることを演じることが得意な新人を前にすると今度は、「主体性」の発揮や「チャレンジ精神」が乏しく「課題設定・解決能力」が弱いなどと評価をしてしまうことになる。
 乱暴にいえば何時の時代にも“主体性を発揮してチャレンジ精神が旺盛で課題設定・解決能力に富んだ働き方をしている若手・新人”などは存在しない。そもそもこのような働き方に徹している社員なども極々少数に過ぎないのが現実であり、大多数はこれらの働き方を「安定した働き方」の対極にあるものとして捉えている。従って、若手・新人を指導する側が軽々に自らが実践していないにも関わらず、“主体性を発揮せよ”などと激励しても、言葉に重みがなく若手・新人の琴線に触れることはない。

  若手・新人の指導・育成には一般論としての若手・新人の傾向や特長に一喜一憂することなく、あくまでも個々の課題と向き合っていかなければならない。とりわけ、指導・育成する側もプロフィットを背負っているため、業務が多忙で育成の時間的余裕がないのも現実である。同時にハッキリ言って上長として部下への育成能力や指導意識が不足しているのも現実である。さらにいえば組織として若手・新人に限らず従業員に対する人材育成が計画的・体系的に行われていないことも現実である。
  この種のみっともないとも思われる組織の現実を若手・新人に隠してはならない。とりわけ現場マネジメントはこの種の現実に目を瞑り、あたかも自らが体系的に育成されてきたように振る舞うことを慎む必要がある。このような虚勢は直ぐに若手・新人に見抜かれるものである。まして何の根拠もない精神論を大仰に持ち出したところ嘲笑されるだけである。現場マネジメントが若手・新人にいえるとするならば、自らの不明や力量不足を認めたうえで、「自分自身は部下一人ひとりの成長に対して責任を持って取り組む姿勢を崩さない」という立場性を明確に表明し続けることの一点に過ぎない。

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