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週刊Neue Fahne

2024年07月29日号

若手社員に真摯に向き合う-12-管理職(上司)が若手・新人に主体的な姿を示す

 現場の管理職(上司)は、自らがこれまで企業組織内で育ってきた経験それ自体が、今日の若手・新人に根本的に通用しないという現実を直視しなければならない。この現実に対して無自覚であるならば、いつまでたっても「自分の価値観」を若手・新人に押し付ける“残念な上司”の誹りから免れないことになる。ただし、これは個々の現場の管理職(上司)の問題ではなく、ある意味で社会動向や時代背景の成せる業でもある。
 現状において現場で管理的な立場の者(ミドル層)は、基本的に年功序列や終身雇用の残滓の下で育ってきた。また、企業内での働きにおいては「昭和世代の価値観」と総称される個人の都合よりも企業組織の都合を優先する風土が刷り込まれてきた。問題なのはこの状況を現場の管理職(上司)が自覚的に捉えることができているか否かである。仮にこの点に無頓着で相変わらず「自分が若い時は…」などという繰り言を続ける意識レベルであるならば、早晩に退場を迫られることになる。

 時代の移り変わりとともに顧客ニーズも変化する。現場の管理職(上司)が時代変化に無自覚であるならば、顧客ニーズにも敏感に反応することはできない。この結果、過去の成功パターンを受け継ぐだけで成果が出せなくなることも必定である。現場の管理職(上司)には、企業業績の向上に向けニーズの変化を捉えた新たな価値の提供に挑戦が求められる。この“挑戦”には当然のことながら自らが「攻めの姿勢」を堅持し続けることが前提となる。若手・新人に対する対応も同様である。育成する側が備えている価値観が時代背景において最適だったころは、若手・新人が育成する側である管理職(上司)の育ってきた価値観を学び取り、自らを適応させることで足りた。
 ところが、世代を超えて働き手全体の価値観が刷新されつつある時代、つまり「今まで通り」が通用しない時代には、むしろ育成する側の方により変化対応が求められる。かつての社員教育は育成する側の価値観を刷り込むことに主眼がおかれた。特に若手・新人の育成においては管理職(上司)がまず自分たちの土俵に若手・新人の側を引き入れることが先決であった。しかし、今日ではそもそも価値観や価値基準が異なっている若手・新人を一方的に管理職(上司)の土俵に引き入れて育成することはある意味で不遜なことでもある。

 管理職(上司)に求められるのは、自分たちの土俵で絶対的な上下関係を築くような支配者的スタンスではなく、若手・新人との間に存在する価値観の違いを認識しつつ、若手・新人の保持している土俵を通して、成果を出すことができるように導くスタンスを堅持することである。このスタンスが育成の姿勢であると割り切ることも重要となる。これは若手・新人の価値観に“阿る”という意味ではない。仮に現場の管理職(上司)が若手・新人に“阿る”という姿勢を見せた瞬間に職場のガバナンスは崩れることになるからだ。
 そもそも価値観が時代に合っているだけで成果が出せる仕事などはもはや存在しない。この点については企業組織の中で培ってきた経験則のある管理職(上司)であれば、身をもって承知しているはずである。仕事や業務展開をスタートしたばかりの若手・新人はさしたる実績があるわけではない。また、成功体験も蓄積されているわけではない。これから成果を出していかなければならない若手・新人には、成果を獲得していくために必要な最適な手段を習得が不可欠なのは当然なことである。これに手を差し伸べるのが現場の管理職(上司)である。

 若手・新人が仕事をスムーズに進め自ら成果を出して経験則を蓄積していくためには、企業組織における適正な立ち振る舞いも必要となる。この立ち振る舞いとは業務スキルも含めたいわゆる広義のビジネスマナーである。今後ますます市場環境は変化の激しい時代を迎える。いわば予測不能の市場環境において、「これまでのやり方」だけでの成果で生き残っていける牧歌的な時代ではない。
 わずか数年前に登場した生成AIの登場は仕事のやり方を大きく変えた。今後のテクノロジーの発展スピードは凄まじく、日常業務手法も大きく変化することになる。そして企業を取り巻く社会全体の価値観も多様化の一途をたどることになる。一昔前に「AIでなくなる仕事の種類」などが話題になった。しかし、AIに仕事が奪われるのではなく、「AIを使いこなす者」と「AIを使いこなせない者」の分岐がはじまるに過ぎない。現場の管理職(上司)に必要なのは、企業組織にしがみつくのではなく、若手・新人とともに時代変化を受け入れ、自律的に活動し新しい可能性を切り拓こうとする主体的な姿を若手・新人に見せていくことである。

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