2024年07月01日号
上司・管理職が若手・新人と向き合う際には、先ずもって自らの果たす役割と機能を明確に意識していなければならない。日常業務での多忙を理由に職場状況やメンバーの状況把握(観察)を怠っているならば、組織の健全な機能は失われ、結果的に個々人がバラバラな動きに終始することになる。結果的にはガバナンス(統治)が効かなくなる。状況把握(観察)とは周囲のメンバー一人ひとりに興味と関心を抱くということでもある。
この行為を怠るならば目標・課題(また、それらの意義、重要度、優先度)が不明確となり、組織活動が停滞し始めることになる。組織の現状や一人ひとりの力量に見合わない決定や非効果的意思決定のプロセスが多発し、権威(組織や上司)への不信感と消極的抵抗(サボリ)が蔓延することにもなる。これら一つ一つの現象は個々のメンバーが悪意を持って意識的に行っているわけではなく、ほとんどの場合は無意識に行われている。
現場の管理職はこれらの現象を察知したならば、その発生要因を追求して常に軌道修正を行っていかなければならない。放置しているならば、必ず組織の悪しき規範として形成されてしまう。必然的に若手・新人に「悪しき企業文化」を植え付けてしまうことになる。企業組織はそれぞれの機能を持つ部門・部署で構成されている。しかし、細分化された業務内容の下では、得てして担当部門の利害が優先し、会社組織にとって最も重要な利益追求が疎かになりがちになる。
とりわけ若手・新人に対しては部門・部署に関わりなく「企業に属する者は全員が営業マンであり、営業とは自分たちが生きていく(生活していく)ための行為そのものである」との認識を堅持させなければならない。この認識が形成させなければ若手・新人は常に受身の姿勢に終始することになる。いかに優れた部門最適が成立していても、それは全体最適につながるとは限らない。
組織が全体として成果をあげるためには、組織を構成する各部門・部署がバラバラに活動しても意味がない。必要なことは組織体としての整合性と効率性を追求することである。若手・新人に限ったことではないが、往々にして組織を構成する一人ひとりは自分の部門ないし自分が最善を尽くしていればよいと思いがちである。確かに前提として自分が最善を尽くさなければ、何事も始まらない。しかし、組織全体での整合性と効率性を考えることができなければ、自己満足に終わる。
組織全体が効率的で活性化した動きを創り出していくためには、組織構成の見直しが常に必要になる場合がある。従前の組織構成の検証することで複数の仕事を一人で兼任して妙な権限を保持している者が分かったりするものである。また、メンバーの偏在や屋上屋のレポートラインの存在、非効率な人員配置も浮き彫りになる場合がある。この種の弊害を克服するためには、現状のメンバーの業務役割に沿って組織構成を再検討する必要がある。
若手・新人に対しては現状の業務役割を通して、一人ひとりの果たす役割を明確な組織構成で示していく必要である。一人ひとりの役割を決めていくことで、管理職と部下である若手・新人の責任も明確になる。同時に部門最適を追求することが必ずしも全体最適につながらないという実体も理解させなければならない。単なる部門最適の集合体では利益の消耗戦が起きていることになる。
部門最適の積み上げだけでは、外部環境の変化に対応するための、思いきった方向転換も困難になるということを若手・新人に理解させなければならない。若手・新人に対しては組織の在り方を明確にしていくことで、一人ひとり果たす役割に対しする適任を自覚させていく必要がある。そして、目標と現状のギャップを如何にして埋めるのか、生産性を上げるために何が必要なのかを若手・新人にも想起させていかなければならない。
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