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週刊Neue Fahne

2024年06月17日号

若手社員に真摯に向き合う-9-明解な言語表現による意思の伝達

もはや企業組織において「わかっているであろう…」「わかってくれるだろう…」という発想は残念ながら通用しない。それは組織内に学歴や知識が偏在しているからではない。とりわけ年長の従業員が若手・新人と接する場合にはこの点を肝に銘じておく必要がある。上司クラスが今日の若手・新人と接する場合に抱く違和感は、自らが多かれ少なかれ慣れ親しんできた“阿吽の呼吸”で物事を済ます組織風土が、通用しないという思いに駆られている点に起因している。
  一人ひとりの意識は自らが育ってきた社会状況や環境という「生育履歴」に規定されるものである。特にこれまで、ある一定の同質性を必要としてきた企業組織では、古くからの慣習が不合理であっても継続されるケースが多い。これらを組織に属する一人ひとりが断ち切るのは本当に難しい。変えるためには、有形無形の膨大なコストがかかる。皮肉な言い方ではあるがコストをかけないための最善策は、「今まで通り」の踏襲である。

  企業組織はあくまでも「共通の目的」の下に集まった個々人によって構成されている。言い換えるならば利益を追求するための「機能体組織」である。従って、本来は決して地域コミュニティや家族のように同質性が高い繋がりが形成されているわけではない。またそれを過度に必要ともしないはずである。同質性が高ければ前提となる暗黙の了解事項が多く存在しているため、敢えて言語的な詳しい説明をすることなく周囲の意図を読み取ることができる。つまり、周囲への忖度や慮りを重視した「行間を読む」あるいは「空気を読む」というコミュニケーションスタイルが成立する。
  多様性が求められる今日、企業組織に地域コミュニティや家族のような同質性を求めることはますますできない。また、求めてもならない。機能体組織である企業組織は、家族と異なり多様な価値観を持った様々な人により構成されている。まして大きく社会的環境が異なる時代に育ってきた様々な「世代」によって構成されている。また、外国の人とも同じ空間で働くことになる。こうした組織構成では必然的に同質性が低くなるため、知識や文化への理解が異なることを前提にした明解な言葉や文書による意思疎通が必要となる。

  ところがいまだに企業組織にはこの同質性を若手・新人たちに求めるという感覚が蔓延っている。端的にいえば企業組織においては、いまだに年長者から「そんなこと、いちいちいわなくてもわかっているだろう…」というコミュニケーションが行われている。しかし、企業組織の上下左右の関係性においては、もはや“わかってくれるであろう”という習慣を持ち込んではならない。このような習慣はとりわけ若手世代と年長者世代の間に不必要なハレーションを招くことになる。
  企業組織に“わかってくれるであろう”的なコミュニケーションを持ち込むことは、利益を追求するための機能をもった組織が“ムラ(村)社会”的な組織運営を営むようなものである。この種の意識に基づいた行為・行動は組織に弊害をもたらす危険性が高い。そして、“ムラ(村)社会”的な組織運営は、煎じ詰めるならば組織を構成する一人ひとりの行動に対する「甘え」や相互瞞着にも繋がる危険性がある。企業不祥事はある意味でこの集中的な現われの一つといっても過言ではない。

  これを防いでいくために上司の側は部下である若手・新人に対して可能な限り、分かりやすく明解に言語化された指示を発していく必要がある。そして時には文書化された指示書の類も必要となってくる場合さえあるという覚悟や準備も必要となる。これは“自分がわかっていることは、他者もわかっているはずである”という前提を取り払うということである。明解な言葉や数字による共通認識を組織内で形成していく習慣化を行っていくということである。
  これらは組織内における新たな文化形成の一環でもある。その端緒として上司は部下とのやり取りの基本である「報告・連絡・相談」に改めて焦点を当て、改善や見直しを行っていく必要がある。「報告」と「連絡」は基本的に過去から現在までの「すでに起きた事柄」であるため、ある程度はツールで対応することもできる。しかし、「相談」は「これからの事柄=未来」である。未来の事柄について語るためには、「正解」を度外視した相互による「話し合い」による合意を作り出していくことに価値がある。つまり、企業組織の目標達成に向け“何をなすべきか”にフォーカスさせるという目的意識性が必要となる。

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