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週刊Neue Fahne

2024年05月20日号

若手社員に真摯に向き合う-5-若手部下との適正な向き合い方

“上司は部下を理解するのに3年かかる。しかし、部下は上司を3日もあれば見抜くものである”といわれている。とりわけ若手部下は上司の行動を実によく観察しているものだ。一方で上司の側は往々にして「会社から部下を預かっているのであり、部下の成長に責任を持たなければならない」という感覚が麻痺してしまう。
 上司がこの責任を果たしていくための大前提は、何よりもまず部下と真摯に向き合うということである。この“真摯さ”がマネジメントの基本である。上司の部下指導の鉄則はあくまでも“部下に対して真摯に接する”ことであり、悪しき自らの態度行動を戒めることである。これは管理職にとってのある種の「器」の問題でもある。同時に自分自身の修養でもある。

 善し悪しは別にして若手社員(若者)は必要以上に傷つくことを怖れ、相手との間合いを測ることに汲々としている。物事に対する経験値の不足に関わりなく、一歩踏み込むことをせず、嫌な関係(ストレスを感じる関係)を避けるという傾向がある。有り体にいえばリスクテイクをしない。これは自己肯定感が希薄になってきている。確かに行動範囲が狭く不特定多数の中でもまれた経験が少ないため、多様な価値観との接触に乏しい。社会常識や他者との関係で身を処していく「生きる知恵」が未成熟な状態のままで、機能体組織である企業に入社している。
 このため大人から見たならば、年齢相応の精神的分化度(実質的な賢さ)が低く、現象的に打たれ弱いと映る。さらには“SNS村”の住人であるためか、一般社会との接点の中で自然に身についてくる対人関係能力が未成熟でもある。こうした若手社員に対して上司が「自分たちの時代は…」などと繰り言をいっても全く意味がない。例えば、若手社員に対して“リスクテイクをしない”嘆いたところで、これは何も若手社員に限ったことではなく、そもそも大方の管理職がリスクヘッジ思考に陥っているので同罪でもある。

 今でも上意下達の傾向が強い業界や企業組織では、ミスを犯したり「報告・連絡・相談」をしない部下に対し上司が怒ったり、叱ったりすることが日常茶飯事になされている。しかし、今日では心理学的な見地から「怒鳴ったり、強く叱ったりする行為は部下指導においては原始的・短絡的な方法であり、それによって人が育つことはほとんど期待できない」といわれている。
 部下を叱ったり怒鳴りつけたりする指導方法は、部下の側に「上司から叱られたくない」という心理が働き、部下の“行動量自体を減らす”ことになる。つまり、部下は叱られることを恐れて縮こまり、仕事を抱え込み、いわれたことだけしかやらない「指示待ち」になる。従って、無為に若手社員を叱ったところで結果的に失敗から学ぶ「経験学習」の機会を閉ざすことになる。

 さまざまな実例からもこの種の手法の過度な運用が、組織内の同調圧力を高めて組織的犯罪を隠蔽する体質にもつながる危険性を秘めていることが明らかである。そこで、上司の側は、部下を無限定に叱る行為が往々にして部下による“仕事の抱え込み”や“ミスの隠蔽”を誘発する危険性を秘めていることを認識しておく必要がある。そのうえで上司はこれまでの自身の部下との向き合い方と併せて、自らの仕事のやり方を変えなければならない。
 具体的には以下のようなことだ。
1.部下に責任を持たせる
 自分が担うべき責任は何か。部下とじっくり話し合い、上司の役割として、自分が担うべき責任について部下の考えを導き出す。
2.期待の合意を創り出す
 自分が期待されていることは何か。部下の考えをじっくり聞き、上司の役割として、部下の考えを明らかにすることを助ける。
3.部下の強みを活かす
自分の強みを活かしてどのように成果をあげるか。上司として部下の強みを理解し、部下が成果をあげる筋道を明らかにする。

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