2024年05月27日号
2024年の新入社員研修もほぼ終わり、5月の連休明けから多くの企業で新人の現場配属がはじまっている。この期を待ち構えていたかのように配属現場から新入社員の傾向、特長、特性さらにいえば“奇行の類”がさまざまに語られている。語られ方は相も変わらず“新人のトンデモ行動”をベースにした内容のステレオタイプである。こうした言説のなかには、実質的にこの20年間変化していないにも関わらず、さも若手社員の早期離職が最近になって顕著になってきたかのように説く眉唾なものもある。
現場マネジメントが自分の拙い経験と比較して、新入社員の行動を「けしからん!」と憤慨しても始まらない。新入社員に限らず人は明らかに時代変化に規定される。若手社員の意識や行動は変化してきているのは当然のことである。この変化について現場マネジメントは、解釈することだけで済ませてはならない。また、旧態依然としたOJTという名の放置を行ってはならない。肝心なのは若者の意識・行動変化に対応して、現場マネジメントの手法も変革させていくことである。
精神論で成長を促す指導を受けた世代に対して、今日の若手社員は学校教育において、良い意味でも悪い意味でも“潜在能力を引き出すために何をするべきか”を考えさせる指導を受けきている。このため、理由も説明せずに上から命令を出すだけでは、若手社員は動くことができない。いや、自分から動けない。現場マネジメントは自分が育った社会環境が若手社員との間で大きく異なっていることを自覚する必要がある。この違いが行動面での大きなギャップや意識差となってあらわれている現実を直視する必要がある。
そもそも新入社員の行動を「けしからん!」あるいは「ありえない」と批判する世代も当時の上司からするならば「訳の分からない行動をとる世代」と位置づけられていたことを忘れてはならない。考え方によってはいつの世も若者は時代の先駆であり、時代を写す鏡のようなものだ。まして、今日の若者たちが多様性を尊重する教育制度の下での学びを通して、旧世代との間で大きな価値観の相違が存在することは確かである。
今日企業内で相応のポジションに就いている役職者はバブル崩壊の余波を体感してきた。そして大企業でさえ倒産をする事態を目の当たりにした。就職の段階ではいわゆる「氷河期」も体験している。内心では定年まで安定した生活を描きつつも、常に雇用や生活への不安を感じてきた。一方で若手社員は、バブルの崩壊とリーマンショックがもたらした世界的な不況の只中で子ども時代を過ごしてきた。
終身雇用制度で安定した職を得ていたはずの親世代が、困難に遭遇している様子を見て、自分の将来をイメージしてきた。その結果、若手社員は正社員として安定した生活を得たいと考える者もいれば、雇用形態にこだわらず自分らしく生きたいと考える者もいる。現象的には多様な働き方の価値観を持つ世代ではあるが、親世代とは異なり雇用自体に懐疑的にさえなっている。
こうした若手・新人との接し方において現場マネジメントは単に若手に対して、“教える側”という意識にいつまでも固執してはならない。職場における“学び”では相互性が不可欠で互酬性がなければ成立しない。つまり、現場マネジメントが留意しなければならないことは、一方的に「教える」という姿勢ではなく、“若手社員からも学ぶ”という意識が重要ということである。
そして、“学び”の相互性と互酬性に向けて現場マネジメントは、以下の事柄を若手・新人と接していく際の前提にしなければならない。
1.現場マネジメントを司る直属の上司が部下の行動に対して責任を持つ
2.部下の面倒を見るのはあくまでも現場の直属上司である
3.職場ルール、期限、状況を説明し、目標を明確にした指示を出す
4.自分が不明瞭な事柄に対して解ったふりをして誤魔化さない
5.業務指導も行わずに業務を丸投げするような愚行を戒める
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