2021年06月07日号
部下に対して、仕事を任せるときには、「何を」「どこまで」任せるのかを明確にしなければならない。テレワークを口実にしてこの点をあいまいにしている現場の上司は、得てして「部下に任せる」という美名で自らの役割を回避しているに過ぎない。
上司は部下に任せたならば、「部下のアウトプットに対しては、上司である自らが責任を負う」という当然のことから逃げてはならない。これは組織原則でもある。仕事を任せて結果が悪ければ「実行した部下の責任である」などという陳腐な自己責任論を展開する上司は言語道断ということだ。
部下に任せた仕事に対して責任を負うことを恐れる上司に限って、仕事を抱え込み部下に仕事を任せない傾向がある。しかし、部下に対して仕事を任せることは、上司の果たすべき役割の一つである。一方で部下に任せた仕事の結果に対する責任を上司が負う以上は、任せるという行為それ自体が非常に厳しい選択であることを自覚する必要もある。
任せるにあたっては、部下に対して具体的で明確な指示を行うことが必要である。そのためには納期はもとより、求めるアウトプットのレベルを含めた「共通の言葉」を部下との間で確立していなければならない。上司と部下との関係性において「阿吽の呼吸」など期待してはならない。何故ならば組織における上下関係において、部下は基本的に上司に依存するからだ。
上司が部下に仕事を任せるとは、部下に「自己効力感」を醸成させていくことでもある。従って、単に任せるとは作業を振り分けることとは根本的に異なる。上司にとって部下の育成行動である。このために上司は部下に仕事の意味と目的を明確に語り、仕事を通して得られる部下の状況変化に対してイメージさせる必要がある。
同時に任せる仕事の重要性を強調して部下に対して、適切なプレッシャーを課すことも重要である。部下の立場では、仕事の重要性の判断がつかない場合もある。そこで、部下が優先順位を間違えてしまわないように、任せる側が気をつけなければならない。
仕事を任せるうえで重要となるのは任せる範囲を明確にすることだ。つまり、予算や発注先の選択の権限などの決定権をどこまで与えるかを部下に明示しなければならない。そして、納期を相互に確認したうえで必ず、期間中に中間報告を要求し適時のチェックを事前に確認しておく必要がある。こうした事前確認を行った後に上司は、よほどのことがない限り「任せた以上は、黙っている」という姿勢を堅持する必要がある。
ただし、中間報告の遅れ等に関しては、上司は黙っていてはならない。部下が中間報告を怠ったり、忘れたりした場合には、躊躇することなく部下を叱らなければならない。この行為を通して、部下に対して報告があるからこそ任せられることができ、上司が部下の結果責任も引き受けられることができるという関係性を理解させていくことができる。
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