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週刊Neue Fahne

2021年06月14日号

テレワーク下でも普遍のマネジメント姿勢 -12- 部下に“協働する個人”として接する

自分から仕事を工夫し、改善していこうと思うならば、物事に対して「疑う」という思考を身に着けていく習慣をつけていかなければならない。とりわけ、仕事上では、単純に「あれか、これか」式の二項対立に陥ってはならない。同時に「正解は一つとは限らない」という姿勢で臨むことが重要となる。
  物事の課題に対する解答は状況によってはいくつもの答えが考えられるし、複数の解が複合している場合もある。さらにいえば、自分の仕事上での正解は、時として部分最適となるが、全体最適とはならない場合もある。従って、常に全体最適性に向けたよりよい解答を追求していかなければならない。

 一般的に上司は自らの経験値をベースにして部下に対して、「これはこうするものだ」と、あたかも結論を先取するかのように部下に提示する傾向がある。こうした自らの経験値に基づく解答が必ずしも状況とは合致していない場合がある。部下が上司の経験値に基づく解答を無批判に受け入れるのは非常に楽なことである。何故ならば結果に対して「上司にいわれたから…」と口実や免罪符となるからだ。また、「正解は上司が知っているものだ」という思い込みというバイアスが定着することになる。
 上司にとって部下との関係性を健全に形成していくためには、こうした部下の思い込みに対してとくに注意しなければならない。経験値を積んでいる上司に限って、部下に「一つの正解」を示してしまいがちになる。また、新人や若手は得てして早く安易に正解を求めたがるものである。このため、往々にして上司の出した「一つの正解」どおりに行動してしまう。一見するならばこの従順な行動に上司は満足する。しかし、この従順な行動の繰り返しは思考しない部下を再生産することになる。

 自分で思考しない行動は、常に他責に走る楽な行為に通じることになる。この楽な行動こそ組織を構成する一人ひとりに悪影響を及ぼす。そして結果として「指示された通りにしか働くことができない」集団になる。しかも誰一人としてこの行動に矛盾を感じない組織体質が形成されることになる。上司は自分の経験値と異なる発想をする部下を排除してはならない。むしろ部下に対して上司である自分の経験値と異なる解答を促していく必要がある。これは部下の視野を広げ、自分で思考する習慣をつけていく育成でもある。
 上司に求められる育成視点とは、部下に自分の経験値を単純に伝授することではない。上司が意識すべきことは、部下に対して職場で発生しているさまざまな事柄に「それでは、どうしたらいいと思うのか?」「なぜ、そうなると思うのか?」という問いかけをすることである。上司はこの問いかけへの部下の解答が、例え稚拙なものであったとしても決して否定してはならない。

 上司の経験値からするならば部下の出す解答は、既知の事柄に過ぎないかもしれない。そこで、部下に対して「なぜ、そのように考えたのか」と問いかけを繰り返していく必要がある。部下の解答が単なる誰かの受け売りではなく、自分で出した解答であるならば、思考した行為それ自体をまずは評価しなければならない。そして、部下が出した解答に基づいて先ずは実践させてみることだ。
  自分の考えに基づく実践により部下は自分から仕事に対しての影響力について気づくことになる。このことで部下は自分自身の仕事に対しての効力感を持つことができる。ひいては、仕事の面白さや醍醐味がそこにあることを知り、自分から思考して行動することの重要性を理解することができるようになる。上司にとって部下は決して自分の「手下」ではない。上司は部下との間で“共に協働する自律・自立した個人”として接し、部下が自ら思考して行動するように支援する関係性を築かなければならない。

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