2021年04月12日号
今年も2021年の新入社員が入社してきた。今年の新入社員は文字通り「デジタルネイティブ世代」である。しかも、2020年を通してコロナ禍の下でのリモート授業を経験し、対面での採用面接等の経験も乏しい。このため、リモートでのコミュニケーションの取り方には慣れている。一方で対面でのコミュニケーションに不得手であると同時に飢えてもいるかもしれない。
こうした特長を併せ持った新入社員に接していく場合には、上司のコミュニケーション能力が改めて問われることになる。企業は何時の時代にも採用ポイントに「コミュニケーション能力」を掲げてきた。しかし、現場の既存社員の「コミュニケーション能力不足」には無頓着である。しかも配属後は新人の育成を現場に半ば丸投げ状態という矛盾が存在している。このため上司一人ひとりの部下育成の力量が良くも悪くも問われてくる。
新人に限らず若手と接する場合に上司は自らにコミュニケーションの基本を問い直さなければならない。また、若手や新人に限らず部下との間でのコミュニケーション姿勢は常に「未来志向」に徹していなければならない。そこで、先ずはともあれ笑顔とポジティブ思考で真摯に接することが不可欠である。上司の余裕のある笑顔ほど、部下をリラックスさせるものはない。これは対面であろうがテレワークの下であろうが変わりはない。
一般的に部下は上司の顔色に実に敏感なものである。仮にモニター越しであったとしても上司の顔色を常に窺うものである。とりわけ、若手や新人に対して間違っても「いまの若者は…」式のステレオタイプで接してはならない。若者はいまも昔も上司の顔色や発する言動には敏感なものである。同時に周囲からの評価には人一倍気を遣うものである。若手に活き活きと仕事をさせていくために上司は、あくまでもメンターに徹して緊張ではなく、集中して仕事をさせていく必要がある。
当然のことながら企業組織の仕事は単に作業の繰り返しではなく、常に成果が求められる。部下を決して過度に甘やかす必要もなければ、無意味にほめる必要もない。企業組織は仲良しクラブやサークルでもない。あくまでも共通の目的のもとに集まっている利益体組織であることを前提にしなければならない。従って、誤りに対しては明確に叱るべきときには叱らなければならない。
しかし、叱る際にも「なぜ、叱るのか」という意味を明解に伝えて説いていかなければならない。上司のスタンスは和顔愛語である必要もないが、常に気韻のある言葉遣いや姿勢で臨む必要がある。若手や新人に限らず部下とのコミュニケーションにあたっては、否定的な言葉遣いを戒め、常にポジィティブな言葉遣いに徹していなければならない。
いうまでもなく部下の発言や行動に対し頭ごなしに否定してはならない。まして部下に「難しい」「前例がない」といったネガティブな言葉で対応してはならない。部下は往々にして自己効力が低い割に自己評価が高いものである。特にこの傾向は若いや新人に顕著でもある。
従って、部下へのネガティブな言葉遣いは、部下の自己評価を全面的に否定してしまうことになり、仕事への意欲をつぶすことにもつながる危険がある。先ずは、部下の発する言葉を受け止め、その上で部下に不足している事柄や仕事の進め方のポイントを具体的に教えていく姿勢を堅持しなければならない。
一覧へ |