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週刊Neue Fahne

2020年08月03日号

分岐点に立つ覚悟-10- 自分の将来に対して明確な責任を持つ

1991年以降日本では「失われた10年」に始まり、今も「失われた30年」と形容される時代が続いている。この間に新興国の台頭により1960年代半ばからDGP世界第二位を謳歌してきた日本もすでに10年も前に第三位に後退している。そして、この順位は今後下がることはあっても上昇することはないだろう。
  この間、幾多の経済変動があったが、新型コロナウイルスの影響で日本の年率GDPは2012年の状況に逆戻りするともいわれている。金融市場は別として実体経済はまさにボロボロの状態になった。そして、雇用に関してさまざまな問題点や矛盾が語られてきた。ここ数年は一部の業種に偏重したいわゆる「人手不足」が、全体の有効求人倍率を上げていた。しかし、今般の新型コロナウイルスの影響により、新卒学生の採用も「売り手市場」から一転して厳しい様相を呈し始めた。全体の有効求人倍率も一気に下降線をたどり1.1倍程度になってきた。

  2018年の各種労働法制の改正により、いわゆる「働き方改革」が提唱されてきた。「同一労働同一賃金」が叫ばれてはいるが、一向に正規雇用と非正規雇用の賃金格差が解消されているわけではない。むしろ、「同一労働同一賃金」は、実質的に正規雇用者の賃金が非正規雇用者の賃金に限りなく近づく「下振れ」を意味することが明確になってきた。
  同時に新型コロナウイルスの蔓延が契機となり、従前から必要不可欠になってきていた正規雇用者の企業内余剰に対する雇用調整が実行しやすくなった。現に多くの企業で本格的に雇用調整が始まっている。そもそも「働き方改革」とは、官邸主導による「成長戦の一つのツール」に過ぎないことも明確になってきた。一見すると「働き方改革」の一環であるかのように捉えられがちな「テレワーク」の推進も、企業内余剰の対象者をより鮮明にする機能を果たしている。

  こうした状況を踏まえるならば働く者にとって自らの雇用について、悲観論が蔓延しているのは事実だ。現実問題として日本の全就労人口の中に占める正規雇用の割合は三分の一までに下がっている。各種の労働法制の見直しという流れがこれらを加速させてきた。いくら「働き方改革」と宣伝したとしてもその内実が「働かせ方改革」にあるという実態に変わりはない。さらに新型コロナウイルスに伴う「ニューノーマル」や「Sosayati5.0」の浸透は、従来の雇用形態を解体させていくことになる。
  同時にこの解体を受け入れることができる人材形成をさらに加速することになるのは必定となってきた。こうした変化に対して働く者一人ひとりが、過去の実績、経験を振りかざして立ち止まるのか、あるいは変化をわがものとすることができるかが問われ始めている。もっとも日本の就労者の「三分の一が非正規雇用者」というが、そもそも「正」と「非」という雇用形態それ自体の是非が問題であるわけではない。正規であろうがなかろうが、自らの将来に責任を持った働き方をしているか否かが問われるべきだ。

  そもそも正規雇用だから「安定している」、非正規雇用だから「不安定だ」と位置づけること自体が無意味なことである。こうした発想をしてしまうことが、自らの働きの意味付けを曖昧にしてしまうことにつながる。社会全体でのセイフティーネット(あらゆる社会保障)の充実を図るための施策や仕組み作りの課題と雇用形態の是非を混同してしまうのは誤りだ。つまり、社会保障制度は決して「自己責任論」などという概念で矮小化してはならない。
そのうえで働く者一人ひとりは、過去も現在も、そして未来も他者に自らを仮託することではないという自覚が必要となる。主人公はあくまで自分自身である。そして自分の将来に責任を持つためにも自らの働く意味づけをおこなう覚悟を持たなければならない。
「働くこと」とは、雇用形態に関わりなく、自らの行動が周り(社会)に対して、役立っていることを実感していくことである。
「働くこと」とは、自ら何かを成し遂げたいという意欲の表れであり、誇りをもって意欲を他者に自ら伝えて(宣言して)成果を出していくことである。
「働くこと」とは、自らの成長に意味を持たせながら人生を無駄なく過ごしていくことである。

そして、「働くこと」とは、人間の根源的な欲求であり、生きているということの証でもある。

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