2019年02月25日号
日常的に携帯やスマホを使い慣れていると電話をかけたり、受けたりすることは当たり前の行為で苦にならないはずだ。しかし、携帯やスマホから相手に連絡をする場合は、直接相手につながるため、「取り次ぐ」という行為は発生しない。ディスプレーに登録された電話番号にかければ必ず相手本人が出る。また、着信があった場合には「誰からかかってきた電話であるか」が一目瞭然で表示され、不特定多数からの電話を受けることはまずない。
ところが、職場では基本的にいまも固定電話が主流であり、外部からの連絡や問い合わせは会社の固定電話にかかってくる。しかも常に「取り次ぎ業務」が発生することになる。このため、電話を受けた最初の者が会社を代表し、電話応対の善し悪しが会社のイメージを決めてしまうことになる。
企業が行う新入社員研修で「電話応答」が必須項目になっているのもこのためだ。ところが新人研修でいくら「電話応答」の練習を繰り返しても、いざ現場に配属された瞬間に躊躇するものだ。何故ならば日常生活で固定電話を体験していないため、不特定多数からの電話を受けることに慣れていないからだ。また、職場で交わされている「悪しき電話応答」の実態に直面することになる。現実的には「誰かが出てくれるであろう…」という他人任せの姿勢が蔓延していることもある。
新人研修で「職場にかかってくる電話は3コール以内に出ること」と強調され、「お待たせしました…」から始まるスクリプトを練習する。これは、「職場にかかってくる電話を受けるのは新人の仕事である…」ということを前提にしているからでもある。そして、新人よりベテランの方が「電話応答に長けている」という暗黙の了解事項があって成立している。もっとも、最近「電話応答」については、新人だけではなくベテラン従業員の中にもおぼつかない者が多くなってきている。このため、新人にとっては「職場にロールモデルが存在しない」という現状も発生している。
こうした現象が発生するのは新入社員のみならず多くの従業員にとって、電話で連絡を取り合う行為が携帯やスマホの発達により、ますます個的な事柄になってきていることにも起因している。携帯やスマホを介した会話は、基本的に不特定多数の人びと、知らない人との間では不要である。極端にいえば出たくなければ出ないでも済むことになる。さらには着信拒否することさえできる。
一方で外部の取引先や顧客からかかってくる電話を会社の電話で受けるとは、顔が見えない知らない者同士や初めて会話する者同士が電話を用いて行うコミュニケーションの入口である。電話の向こう側の姿は見えないし、双方が耳でしか判断できない。まして、会話には敬語を用いらなければならない。このため、不特定多数の人びとからかかってくる会社の電話は、受ける者にとって非常なストレスにもなり怖くなる。
新人はこうした「固定電話が怖い」という感情を率直に認めることも重要だ。しかし、いつまでも怖がっていることはできない。仮に新人が「入社したばかりなので仕事に慣れるまで、会社全体の流れがわかるまで電話はとらない…」「自分が真っ先に電話をとって誤った対応をすると迷惑をかけてしまうのではないか…」と委縮しているならば、永遠に仕事ができるようにはならない。固定電話での電話応答や取り次ぎ方法は、画一化されたパターンでもある。先ずは恐れずに電話応対の場数を踏むことが習熟への近道である。
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