2018年04月23日号
多くの企業は「経営理念」や「行動指針」を掲げている。しかし、残念ながら一般の従業員は会社組織の“あるべき姿”の意味するところを明確に意識しながら日常業務を展開しているとは言い難い。
これは従業員の怠慢やレベルの問題ではない。本人たちにとっては、「目の前の業務をこなすことで精一杯だ」という意識に陥っているのが正直なところだろう。残念ながら、目の前の業務を一所懸命にこなすことに集中すれば、自然に「経営理念」ゆ「行動指針」に沿った業務展開ができるようになるわけではない。
一般の従業員が「経営理念」や「行動方針」を理解していなのではない。むしろ日常業務の延長線上からでは、「経営理念」や「行動方針」を意識化されにくいということだ。また、企業組織が順風満帆に回り、業績も向上している段階では、誰しも「経営理念」や「行動方針」をことさらに意識することはない。しかし、混沌として不確実な状況下では、一人ひとりの従業員に「経営理念」や「行動方針」に基づいた企業の存在意義を意識化させていく必要がある。これは一人ひとりの従業員が“自らの属する企業組織のあるべき姿にこだわる”ということでもある。
企業組織の“あるべき姿にこだわる”からこそ、組織体が壁に突き当たっても、「経営理念」や「行動方針」に立ち返り、次の一手を繰り出すことができるのである。このため、管理職は一般従業員に対して、ことあるごとに“あるべき姿”を体現し、自社の寄って立つ理念や指針にこだわりぬく姿勢を率先垂範で示していかなければならない。
“あるべき姿”にこだわりぬく姿勢とは、企業組織の存在理由を部下に浸透させるということだ。単に経営理念や方針の策定することが目的ではない。策定することと従業員が理解することを混同してはならない。企業組織の経営理念や方針は、企業が目指す価値観でもある。これを明確にするということは、一人ひとりの従業員の価値観と企業組織の掲げる価値観との間に整合性を持たせるということである。
整合性を持たせるため組織的なコミュニケーションが不可避となる。組織体においてコミュニケーションが円滑であるとは、単に上位下達が貫徹されることではなく、“伝えた事”が正しく“伝わる事”ことであり、突き詰めるならば「やってほしいことを正しく理解させ、やらせる事」である。
管理職が“あるべき姿”にこだわり、部下との間でコミュニケーションをとる前提には、「組織の基本ルールが徹底されている」ことが必要となる。つまり、組織として実行すると決めたことは、例外を認めずに実行させて結果に対して検証させていくことである。
同時に実行過程でチームワークを堅持し、これを乱すマイナス要因を躊躇なく排除することも時には必要となる。
その際の基準はあくまでも企業の理念や方針に合致しているか否かである。管理職は企業組織の足を引っ張る部下、あるいは組織性を阻害する考え方などをきっぱりと否定し、必要であるならば「排除を持さない覚悟」がなければならない。管理職が“あるべき姿にこだわる”とは、自らの「覚悟」が試されることでもある。
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