2018年04月09日号
現場マネジメント機能を単純に「部下に対しての指示・命令」と理解するならば、部下の成長のみならず組織全体の成果も期待することはできない。一般的に組織において職位が高くなれば業務内容や役割は抽象化するものだ。一方で職位が低ければ「いま行っている個々の業務内容」に対する具体的な成否に関心が集中することになる。
上司が部下に対して行う指示・命令は、ともすると「求める成果」を明確に提示することなく、単なる伝達事項に終始する傾向になる。この結果、指示・命令を受けた部下の側は、業務の全体像を把握することなく、“目先の業務を消化することが仕事である”という錯覚に陥る。そして、いつしか全体の成果に対する自らのかかわり意識が希薄になる。つまり、現状維持の気持ちが蔓延が自己成長意欲を疎外し「今のままでいい」と感じることになる。
現場でのマネジメント実践で不可欠なことは、先ず“人は自らが成長し成果をあげたいと思考するものだ”という立場性を堅持することだ。常にマネジメントがこの立場をとることが、部下に対してOJTを始めとするあらゆる育成が成立する前提である。
現場マネジメントにとっての部下育成とは、上司の側が“部下が自らの能力向上を図り、自らが成長していくという姿勢で業務実践を展開する”ことを期待し、支援することにほかならない。さらにこの期待を日頃から部下に発信し続けることだ。さもなければ部下の意識は、いつまでも単純な義務感の域から脱することはない。根底に「部下への成長への期待」が込められていない指示・命令は、部下をして「やらされ仕事」に安住させることになる。
部下への成長への期待を示すため上司の側は、個々の部下の状況や理解度に相応した個別の具体的な達成目標を明確に指示し、部下とともに達成課題を確認し合うことが重要となる。部下の達成目標があいまいであれば、部下自身が成果測定をすることもできないし、上司の側の評価基準もあいまいになる。
また、指示や命令を行う段階で、その意味や目的を明確に語ることも重要となる。部下にとって業務の意味や目的が不明な指示・命令を実行することは、文字通り仕事が「自分事」からかけ離れたところに存在することになる。これでは仮に首尾よく終了したところで、達成感を味わうこともできない。結果として成果の有無すら自分で体得することもできなくなる。
現場マネジメントでは、上司の側が部下への指示・命令を行う段階で明確な目標設定を怠ったならば、結果に対しての適正な「評価」も下すことはできない。同様に指示・命令を受けた部下の側も自分自身の結果に対して「内省」することもできなくなる。つまり、指示・命令の出しっぱなしで、アウトプットされた事柄を単に受け取ることだけを繰り返していているならば、部下に成長意欲を醸成させることにはならない。
現場における上司が行う部下育成とは、部下の一人ひとりに人間が本来的に保持している「自らが成長し成果をあげたい」という思いを意識化させていくことでもある。部下の単純な日常業務の繰り返しだけでは、部下自身の成長への意識づけを期待することはできない。あくまでも上司の側が“部下に対して仕事の意味と目的を明確に指示し、生み出された成果物に対する適時適切なフィードバックを繰り返す”という不断の働きかけ=外部からの刺激が重要である。
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