2018年04月02日号
新入社員とっては組織的な業務活動において、上司への「報告・連絡・相談」が決定的に重要となる。新入社員には研修等でもこの点について、耳にタコができるほど指導されるはずだ。「報告・連絡・相談」はあまりに常識的な基本行動である。このため、指導する側もあまりに常識的な事柄であるため、重要性の強調に留まる傾向がある。
ところが、実際に「報告・連絡・相談」には心理的バイアスが影響し、十全に行われているとはいい難い。そこで、「報告・連絡・相談」が“なぜ大切であるのか”“怠ったならばどのようなことが起こるのか”という意味理解をおざなりにしてはならない。同時に「報告・連絡・相談」は新人に限らず、現場のマネジメント業務に携わるすべての階層に共通する。つまり、する側も受ける側も改めて意識しなければならない。
「報告・連絡・相談」の指導にあたっては、先ず新人と上席者の「責任範囲の違い」という観点から指導する必要がある。仮に新人に一つの仕事を任せたとする。任さられた新人は指示の通りに一所懸命に実践することになる。しかし、実践して得られた結果に対しては「責任」を持つことはない。
あくまでも結果に対する責任は指示を出した上席者が負うことになる。結果が悪ければ新人ができることといえば、精々のところ上席者に頭を下げて詫びることぐらいだろう。また、大きな失敗が発生した時点で新人が「この失敗の責任は自分にあります」といくら主張したところで、企業組織では新人の「責任」を問うことはしない。上席者が部下の失敗に対して「人選のミス」や「監督不行き届き」の責任を一身に背負うことになる。
企業組織では上席者が新人に仕事を任せた時点で、「管理責任」を負うことになる。失敗に対して「自分の責任です」と申し出る部下に対して「そうだ君の責任だ」などと部下に責任転嫁する類の上司は、そもそもマネジメント能力以前に資質が欠如としていることになる。新人が大きな失敗を犯さすことなく、日常業務を展開している場合には、さほど仕事に対する「責任」を意識することはないであろう。
特に新人にとって仕事が順調に進んでいる状況の下では、表立って「責任」という概念は形成されない。ただし、仕事は状況によって可変するものであり常に順調に進むものではない。時には大きな方向転換が必要になる場合がある。必然的に大なり小なりの不具合や失敗がつきものだ。当然ながらクレームも発生する事になる。こうした場面で「報告・連絡・相談」の重要性を理解することになる。
仕事を指示する側は、失敗を犯さない業務を新人に与えがちになる。なぜならば失敗した場合には、仕事を指示した側の責任問題を危惧するからだ。しかし、これでは新人に対していつまでも単純業務を指示することになる。このため新人は、あたかもルーチンワークが自分の仕事であると理解することになる。一方で、こうした新人に対して責任回避の意識からルーチン業務しか与えない上席者の常套句が「新人が成長してくれない」という繰り言だ。
往々にして指導する側の指導責任回避の意識が新人の成長を妨げていることになる。新人に対してはその成長段階に合わせて段階を踏まえて、適時適切な業務指示を行う必要がある。そして、その都度、指示を出した側の責任として、うるさく新人に対して「報告・連絡・相談」を要求していかなければならない。同時に部下からの「報告・連絡・相談」を厭う心理を払拭しなければならない。
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