2018年02月19日号
新卒採用の「求める人材」イメージでは、「未知の世界、時に非常に厳しい環境に、『面白そうだ』『やってみたい』という気持ちで、積極的に飛び込んでいく前向きな気持ち、姿勢・行動力」等が強調されている。ひと昔前のように新卒に「白紙状態」ではなく、“しっかりと自分の頭で考え、課題を解決しようとする姿勢を保持している人材”であることも強調されるようになってきた。
こうした人材イメージはグローバル化が喧伝されてから一般的になってきた。しかし、実は“しっかりと自分の頭で考える”人材などは、最初から存在しているわけではなく、企業での日常業務行動で蓄積させていく育成課題でもある。
新卒採用時において「即戦力人材」を求めることは不可能であり、あくまでも企業内の育成過程で力を蓄積させていくという姿勢が必要だ。もちろん、成長も学習も本人の努力の結果なのであり、無理強いすることはできないしすべきでもない。あくまでも本人次第ということだ。しかし、少なくとも現場マネジメントが学習意欲を醸し出して続けていなければ、新人に学習意欲が継承されることはない。
今日、単純に“入社=会社のメンバーになる”という前提に基づいた「メンバーシップ型」雇用は通用しなくなっている。あくまでも仕事の内容と質を問う「ジョブ型」雇用への転換が進んでいる。さらには、少子高齢化が進む中で“労働力不足を補う”というネガティブな採用を繰り返していては、結果的に単なる工数人材の採用の繰り返しで終わってしまう。あくまでも採用した新人を経営資源としての「人材」に育成していくのが現場マネジメントの役割と責任である。
新人を経営資源としての「人材」へと育成するためには、育成の一環として新人に対して、幅広い知識の習得を奨励し機会提供をしていかなければならない。幅広い知識の習得とは、単にビジネススキルに限らない。例えば映画、小説、絵画をはじめとする文化芸術に対する自分なりの見識、さらには社会状況等に対する一家言がある議論を闘わせることができる一般教養を身につけることも意味している。
一般教養を身につけるとは、“自分とは異なる意見や考えに対しても共感しつつ、自分の考えを開示できる”ということである。そして自分の意見を持って相手の話を聴き、“相手の考えを尊重しながら自己主張ができる”という力である。
企業組織で力を発揮する人材の仕事の仕方には共通した特長がある。それは上司から言われた問題や、発生した問題に対応するだけではなく、「自ら問題を見つけ出す」ことができるということである。優れた人材とは問題を発見しようと努力し、また発見した問題を巧みに解決に導くことで、企業組織に貢献するものである。
企業組織で発生することがらは数学の問題のように決まった正解があるわけではない。新人に限らず現場マネジメントが行わなければならない人材育成とは、“唯一の正解があるわけではない課題”に対して様々な状況対応を踏まえて取り組む気概を持たせていくことでもある。
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