2018年02月05日号
一般的に人材の定着化は「待遇に起因している」という錯覚がいまだに多いが、定着化を待遇の問題に矮小化してはならない。まして「優秀人材」の採用が定着化に直結するなどと考えることは誤りだ。新卒に限らず人を採用する段階では、採用する側は採用者に「過大な期待」を持つものだ。このため「優秀な人材を確保したい」という思いが先行する。
“優秀な人材”とは時として「即戦力人材」と同意語で語られる。採用担当者は勿論のこと現場マネジメントにとってもこの“優秀な人材”という発想が極めて危険である。とりわけ、現場マネジメントは「優秀人材は採用するのではなく育成するものである」という視点を明確にしなければならない。直截で乱暴な表現だが優秀な人材を求めてはならない。
同時に現場マネジメントは「優秀な人材は採用できない」という覚悟が必要である。世の中には確かに“優秀”と称される人材が存在している。しかし、この種の人材はチャレンジ精神が旺盛で将来のビジョンをしっかりと確立している。従って、仮に“優秀な人材”を採用したとしても結果として定着化に結びつかないケースもある。
そこで、“優秀さ”を追い求めるのではなく、将来自社の社員として“優秀に育ってくれそうな人材”を採用するという“割り切り”が必要になってくる。如何にして人材を戦力として組織するかということだ。
新卒者に限ったならば大半が、企業組織に求められる本来的な役割を理解していない。また、単に身分格差のごとく就労形態を捉えて、「正社員信仰」というべき傾向が浸透している。「正社員信仰」が蔓延っているのは、「仕事とは何か」という意識づけをしっかりと行わず、雇用形態の有利不利のみに終始している就職指導にも大きな問題がある。
現場マネジメントはありがちな就労意識の未成熟度を前提にして育成にエネルギーをかけなければならない。新卒・中途採用に限らず、採用コストをかけて人材を獲得しても、現場の組織体制が整っていなければ就労意欲が高く、力のある者から先に辞めていくことになる。
採用にあたって、現場マネジメントが実施しなければならないことは、人材に求める職務要件基準を明確化して周知を図ることである。そして、入社後に「何を求め」「何を実行してもらうのか」を組織内で共有することが必要となる。
採用に対して現場マネジメントが積極的に採用段階から介入する組織風土を構築する必要がある。採用と定着は一体の関係であり、組織がその存続を確保していくために不可欠な組織自体を日々に変化対応させていく組織開発(Organization Development=OD)でなければならない。
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