2018年01月29日号
社会の変化は徐々に企業に影響をおよぼし、10年もすればあらゆる業種・業界に大変化をもたらす。しかし、残念ながらこの変化が個々の従業員の意識変化に直結することは期待できない。人の意識は社会変化のスピードよりも遥かに遅いものだ。なぜならば人はおのずと「これまでのやり方」に固執する現状維持のバイアスに規定されてしまうからだ。
特に過去の成功体験が強ければ、手慣れた手法に依拠してより一層「現状のままでありたい」と意識するものだ。このため社会変化に対応するためには意識的な行動変容を創り出していかなければならない。現場マネジメントは、個々の従業員に対して社会変化に適応する就労意識の変化を促す責任がある。
現場マネジメントが従業員に伝えるべき就労意識とは、第一に「自らの存在価値を高める」ことであり、第二に「自らの働きに付加価値をつける」ということだ。
「自らの存在価値を高める」ということは、一人ひとりが周囲に影響を与え続けていくために役職の有無にかかわらず、所属組織において“リーダーシップ”を発揮するということであり、具体的に以下の点を意識させることだ。
・自らの働き方を律する「勇気」と協働による利益を追求の重要性。
・自らの職域において与えられた職責(役割)を果たすこと。
・自らの存在が周囲に影響を与える存在になる。
また、「自らの働きに付加価値をつける」とは、自らの働きに対して責任を持ち組織貢献=協働する意識を醸成していくために以下の姿勢を貫くということだ。
・あくまでもパフォーマンスを重視する。
・何事においても「凡事徹底」を貫く。
・職場で発生している事柄は全て「自分に関わりがある」という当事者意識を持つ。
・あらゆる事柄について、先ずは自分の頭で考え、自分の意見を持って他者の話を聴く。
就労意識と同時に現場マネジメントは従業員に対して、「義務が存在する」ことを理解させる必要がある。昨今の「働き方改革」論議は、ともすると働く側に「自らに裁量権がある」という錯覚を生み出している。義務が発生するとは企業と従業員の間での労働契約が双務協定であるという意識である。これを曖昧にすることなく従業員に対して「誠実勤務義務」「職務専念義務」があるという点をしっかりと強調する必要がある。
つまり、「従業員は労働契約を締結している以上、労務を誠実に会社に提供する義務がある」という至極当然のことを改めて強調するということだ。例えば、会社の経営方針や戦略に個人的には納得できないという「不満」を抱いていたしても、それらが違法でない限りは、誠実に労務を提供し、職務に専念する義務があるということだ。
現場マネジメントは「職場秩序維持」を常に意識しなければならない。企業組織で働く以上は「部下には上司の業務命令に従う義務がある」という点を曖昧にさせてはならないということでもある。何故ならば上司の命令に従わないことがまかり通ってしまうならば、職場の秩序は維持できなくなり、ガバナンス(統治機能)を失うからだ。
現場マネジメントには、従業員に対して企業の存立を維持し目的たる事業を円滑に運営するため、企業秩序に服することを求めることを怠っても躊躇ってもならない。この道理はハラスメントと全く別次元の問題であるという自覚が必要だ。
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