2017年08月21日号
管理職にとって部下育成は必須の課題である。このため育成の手法も様々に語られている。時には「叱る」ことが強調されたり、逆に「褒める」ことが強調されたりもする。あたかも二律背反とも思える主張がなされる場合もある。しかし、管理職が部下を育成する場合には、一人ひとりの状況を踏まえた使い分けが不可欠だ。
「叱る」「褒める」のいずれであっても、部下に対して仕事に対する「動機づけ」をいかに行っていくのかということである。その際の前提は部下に対する「期待」と「評価」を常にメッセージとして部下に伝え続ける必要がる。部下の指導において「以心伝心」を期待するならば、管理職の側の職務怠慢となる。
残念ながら優秀な部下が突然にあらわれるわけではない。管理職の側が部下に対して何の働きかけせず、部下が自主的にやる気を出してバリバリ仕事をするというのは、きわめて稀なことである。仮にこのような部下が存在しているのであれば、すでに管理職の側が部下に追い抜かれていることになる。
仕事への姿勢や就労意識は単純に職務の経年によって結成されるものではなく、あくまでも外部からの意識注入がなければ形成されるものではないと考えなければならない。部下を「褒めて伸ばす」ことが強調されるが、これは部下の存在を認めるという意味であり、意味もなく方便として僅かな事柄を褒めたところで見抜かれるのが必定だ。
管理職が部下育成で心がけなければならないことは、一人ひとりが仕事に責任をもって取り組み、成し遂げていく過程での充足感を与え続けていくことである。そして管理職は常に部下に己の成長を実感するきっかけ≠提供していかなければならない。このために管理職は以下の点に留意する必要がある。
1.部下に参加意識を自覚させる
目標設定や計画段階、実行にいたるまで、参加させて力を発揮する場を与える。
2.部下の意見を尊重する
一人のビジネスマンとしての存在を認めて、尊重する態度をとる。年齢、経験などの先入観を捨て、賛成、反対は別にして、部下の意見に耳を傾ける。
管理職にとっての部下育成とは「自分の手下」や「配下」を作ることではない。まして、自分の仕事の「下請先」を作り出すことでもない。あくまでも一人ひとりの自立した個人として、部下に対して仕事は自分のミッションである≠ニいう自覚を形成させて行くことである。
従って、管理職自身が自らの仕事への使命感≠部下に示していかなければならない。部下の仕事姿勢は管理職の仕事に対する姿勢を実によく映し出す鏡でもあることを忘れてはならない。
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