2017年06月05日号
新入社員研修は何処の企業でも実施する。そして一定期間の研修の後に現場に配属されて、現場のOJTに引き継がれることになるのが一般的だ。この段階で、往々にして現場OJT担当者は、新人が何もできないことに唖然とするものだ。
もちろん業務スキル上の未熟さには我慢することができる。しかし、特に管理職は業務スキル以前の一般常識レベルの未熟さには腹立たしくも思うものだ。さらに新入社員ならまだしも一定の年齢に達した部下の未熟なビジネス所作に対しては、怒りさえ覚えてしまう。
上司の側が部下に対して抱く不満は「何度も同じことを注意しているのに、直らない…。改善されない…。」という内容に収斂されるといってもよい。この不満の根底には「前にもいっているのだから、理解しているはずだ…」「知っているはずだから、できて当然だ…」「新入社員ならまだしも、それなりにキャリアを積んでいるのだから、いい加減に自分で成長してくれないと…」という心理が働いている。
しかし、「前にいった」といっても実は「過去にいったことがある」という程度であったりもする。また、「知っているはず」といっても、「自分が教えたわけではない」こともある。要するに上司の側が自分にできていることに対して、部下ができないことに不満を抱くということだ。
部下は上司の所作や振る舞いを真似るということもある。そこで、上司は部下の行動を観察しつつ、自らの行動点検もしなければならない。部下が適正な行動をとっていないと判断したならば、先ず自分が適正な行動をとれているのか否かを確認する。そして、自分自身ができていると判断したならば、部下に対して何度でも、わかるようになるまで、できるようになるまで、指示し、指導する必要がある。
自分ができていないのであれば部下指導の過程で自らも改めて行くという姿勢が重要である。自分ができていない事柄を棚に上げて、部下の至らなさを指摘したとしても天に唾することになる。
部下の育成に対して「あまりこちらの手をわずらわせずに育ってほしい…」と考えるのは上司の側の甘さであり傲慢である。上司は一人ひとりの部下に必要な課題を設定してクリアーさせていく指導が必要となる。部下は一律ではない。ある事柄はできるが、ある事柄に対しては無頓着であるというケースもある。従って、指導はあくまでも個別性を帯びることになる。部下を一律に成長させようと思うと一人ひとりの指導課題が曖昧にもなってくる。
部下の成長は経年で一律的なものではない。できていない事柄に対しては、辛抱強く指示、指導を繰り返さなければならない。部下の個別指導の前提になるのは、部下一人ひとりの行動観察を決して怠らないということだ。
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