2017年04月17日号
新人に限らず誰しも「誰かに何かをしてもらう」という依存心がある。特に会社組織において従業員は“会社が何かをしてくれる”などと思いがちになる。当然のことながら会社には「雇用責任」が存在している。しかし、雇用はあくまでも契約関係であることを忘れてはならない。
労働契約は従業員が労務を提供し、使用者が賃金を支払う義務を負う双務契約であり、従業員には就業時間中職務に専念する義務がある。この点をしっかりと新人に徹底させなければなららない。従って、就業時間中に仕事と関係もないことをした場合には、その時間は労務を提供したことにはならないし、期待される成果物も問われることになる。
“会社に行って何がしかの仕事をしていれば、とりあえず給料がもらえる”という発想は、恐らく、大なり小なり従業員ならだれもが持っている意識だ。確かに、これは単純作業レベルでいえば労務の提供という意味でひとつの事実でもある。しかし、この思いが高じてくると、いつしか、「会社は給料を保障してくれるのが当然である」という勘違いが起こってくる。
さらには、福利厚生、社内行事など従業員に対する恩恵も当然のことと考えるようになってくる。 この様な意識での働き方を繰り返していると、次第に業種や業態、扱っている商材やお客様の違いなどを無視して、自らのパフォーマンスを度外視して、無意味に他社と自社の比較を行いがちになる。
これらはしまいに“上司や周囲のすべての人たちが、自分に何かをしてくれる”あるいは“自分は被害者だ!“という錯覚を生み出す。会社が実施する教育研修についても同様だ。会社特有の専門知識の習得などは別として、本来は自ら習得して行かなければならない基礎的知識や態度能力の欠如を棚にあげて、「教育制度が不十分だ」という不満を持ち始めることになる。
一般的に若手社員が早期退職する理由の上位にあげられるのは、「上司とのコミュニケーションがない」「やりたい仕事をさせてもらえない」という項目だ。こうした退職理由に対して職場ではいろいろな工夫がなされ始めている。もちろん、単純に自らの経験則だけを頼りに新人に対処しても問題は解決しないし、悪影響を及ぼすこともある。
一方で上司とのコミュニケーションがないのは、“上司だけの責任なのだろうか”、やりたい仕事をやらせてもらえないのは、“自分自身の能力が不足しているのではないのだろうか”という内省を促す指導を恐れてはならない。つまり、本来は自助努力として解決していかなければならない事柄に対してまで、「誰かにやってもらおう」と思う姿勢を改めさせていく必要がある。これは単に新人指導に限ったことではない。
最近とみに「働き方改革」が喧伝され始めているが、職場に蔓延っている“他力本願の働き方”を如何にして克服していくのかということも重要な課題となっていることを忘れてはならない。“他力本願の働き方”はおおよそ次のような意識としてあらわれてくる。
・「責任」は上司が持ってくれる。
・「目標」は上司が示してくれる。
・「戦略」は上司が立ててくれる。
・「具体的な行動」は上司が教えてくれる。
会社組織は従業員に給料を支払うために存在しているものではない。同時に会社組織のさまざまな上下関係や体制は、組織目標を達成するために構成された役割機能であり、一人ひとりが役割に応じた責任を果たしていかなければならない。一人ひとりが自分で努力をするという行動をとらず、常に「誰から何かをしてもらおう」と思っていては、自分自身の成長はストップすることを継続的に意識化させていくことが重要だ。
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