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週刊Neue Fahne

2015年12月07日号

管理職の経験則は時として部下育成の桎梏となる

 管理職が行う部下育成とは、単に業務内容を理解させることではない。部下一人ひとりに“自分から仕事を工夫し改善する”という意識を形成させていくことである。自分で考えることをしない部下は、いつまでたっても“上司からいわれたことを処理することが仕事である”という姿勢から脱却することはできない。
“自分で考える”とは、物事に対して常に「なぜ」という問いを発し続ける習慣をつけさせることである。

 仕事では常に1プラス1が2になるとは限らない。つまり、正解は一つに限定されているわけではない。答えを導くために幾通りもの考え方があるだけではなく、実際に同時に複数の答えが存在する場合もある。従って、仕事とは常に状況にあった最適解を求めて自分で考え、行動を展開していくことでもある。
 管理職たる上司の側が部下指導で注意しなければならないことは、自らのビジネスシーンで培ってき経験則を踏襲して「これはこうするものだ」と一方通行での指導の繰り返しだ。確かに上司にとっては、この種の指導方法が楽であることは確かだ。何故ならば自らのビジネス人生を通して蓄積された経験則を少しずつ切り取って部下に伝授すればよいからである。こうした指導方法は長期的に安定して成長するビジネス環境では十分に通用してきた。

 ところが、長期に安定した成長など望めない時代に過去の経験則が単純に通用するわけではない。このため上司が自らの経験則に基づいた結論を前提にした部下指導に固執すると部下の側に“常に上司が正解を持っている”という“思い込み”を発生させることになる。この結果、部下は上司に対して「やり方を教えてください」と質問を連発するようになる。
 特に有能な上司は経験則も豊富であるため、部下に対して「正解」を示しがちになる。すると部下の側も上司の出した答えどおりに行動する安易な方向に向かうことになる。ところが逆にこうした部下の行動をみて、上司は「言われたことしかやらない」と不満を抱くという悪循環に陥るものだ。

 ひとは仕事を通して成長するものだ。そこで、上司は部下に教えるべきことは“仕事の上での正解を導くために自分の頭で考える”という行為の重要性だ。また、上司の経験則に基づく答えは経営環境の変化の下では通用しない可能性もあることを教えなければならない。今日では上司の持っている情報量が必ずしも部下に勝っているとは限らない。年配者の経年による情報優位性も通用しない。
 そこで管理職が行う部下指導では“部下自身が視野を広げ、自分の頭で考えて答えを出していくための支援を行う”ことにシフトする必要がある。今日の人工知能の長足の進歩によって“いわれたことしかしない、できない者”が行う業務の蓄積は、早晩意味をなさなくなることは必定だからだ。

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