2015年09月07日号
管理職が部下に自らのポジションを意識化させるためには、自分自身の行動を律したうえで次の3点を教えなければならない。ただし、この教えとは自らの仕事姿勢を通して浸透させていくという意味である。
自らが自分の仕事への矜持なくして部下をテクニカルに動かそうなどと考えるのは、本末転倒である。同時に管理職の矜持なき行動は必ず部下に見抜かれ、嘲笑の的になることは必定である。
管理職が部下に教えるべき第一の事柄は、組織集団での“規範”を形づくる立ち振る舞いだ。つまり、あいさつ、言葉づかい、態度、職場の規律など社会人としての振る舞の手本を示すことである。これは新人にだけ要求することではなく、職場全体による単純な事柄の日常的な反復である。
第二は、仕事のやり方である。これは反復練習ですぐに身につくものではない。手順を追って個別に課題を与え、一律化することなく課題と実践そして検証という時間をかけながら、部下の「できること」のレベルを上げていく忍耐力が必要になる。
第三は、一つ一つの仕事に対して「なぜ、それを実行する必要があるのか」という意味付けを明確に“自分の言葉”で語ることである。この仕事は会社のなかで、どのように位置づけられるのか。それを担当する部下本人は、会社のなかでどのような役割を果たしているのか。これらの“意味”を語ることが極めて重要となってくる。
管理職が部下に教える三つの事柄の中で、一番厄介な事柄は三番目の仕事の意味づけを語り伝えることだ。これは、管理職自身のこれまでの社会や企業での経験や仕事への姿勢が鋭く問われてくるからである。管理職自身が現状の仕事の意味として「なぜ、これを実行するのか」を明確に指し示すことができなければ、部下は仕事を単純に「上からの指示をこなす」というレベルにとどまることになる。
もっとも、仕事の意味を部下に示すことができない管理職は、自分自身を「単なる作業者」と落とし込めていることになる。
管理職が部下に教える「三つの事柄」は、至極単純なことであり、どれも当たり前のことである。なかには「これらの事柄はすべて部下が自分で考えて吸収していくべきだ」と考える管理職がいるかもしれない。
しかし、管理職とって「部下の問題」と映ることの大半が、実は「管理職自身の問題」であることを忘れてはならない。管理職自身がこれまでのやり方を変えていかない限り、部下との信頼関係は築けない。従って、管理職としての存在意味もないことになる。
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