2015年03月16日号
「先見の明」という故事がある。“将来どうなるかを前もって見抜く見識”ということだが、実際に未来を予測することは極めて難しい。いやできないかもしれない。しかし、仕事においては、次にやらなければならない事柄はおのずと見えてくることがある。
ただし、その場合には条件がある。それは“今現在”行っている仕事に積極的かつ真剣に取り組んでいるということだ。“いま”を無為に過ごしていては見えるものも見えなくなってしまうものだ。また、リスク管理も同じだ。
このように考えると仕事で発生する事柄とは常に先読みできる。いや、先を読んで仕事を展開しなければならない。仕事の効率化や合理化を実施する発想も“先を読む”ことから生まれてくる。
また、仕事にはあらゆるトラブルが付きまとうため、そのトラブル回避のため時間に余裕を持たせた仕事のスケジュールを組むことも“先を読む”ことと同じだ。さらにいえば仕事の事前準備も大きな意味でいえば“先を読む”ことに繋がっている。
ビジネス上の納期で「突発的な仕事が立て続けに入ってしまって遅れました」などは通用しないし、言い訳になってしまう。仕事では常に「何が起こるかわからない」という緊張感を持って臨むことが前提だ。
会社組織では仮に自分の仕事だけの先が読めていても全く意味をなさない。それは会社での仕事は決して自分一人で「自己完結」するものではなく、必ず前工程と後工程に挟まれているからだ。そして、自部門だけの仕事もあり得ない。必ず会社の仕事とは、他部門との連携で成り立っている。従って、先を読むためには他部門の状況を把握しておくことも不可欠になる。
管理職の中にはいまだに「会社の方針は経営陣が決定することで、我々はその決定に従うだけだ」と億目もなく発言する者もいる。こうした管理職は、たとえ瑣末な指示であったとしても、それがどのような背景と意味を持っているのかを日々に意識しないで済ませてきた証拠だ。こうした管理職の意識は若手・新人に伝染してしまう危険性がある。
“先を読む”とは、“受け身の姿勢からの脱却すること”につながってくる。受け身の姿勢で仕事をしていると必ず“締め切り”という意識が希薄になってくる。そのため、仕事の効率や無駄を省こうという意欲も減退する。当然のことながら工夫もしなくなる。
その結果、仕事の完了を自分でコントロールすることもできなく、次の仕事をいつ始められるかもわからずにスケジュールも立てられなくなる。スケジュールが立てられない者にとっては、“いまの仕事を急ぐ理由がない”ということになる。挙句の果ては、仕事に期限が設定されていないため、結果が疎かにされてくる。
管理職は若手・新人をこのような堂々巡りに陥らせてはならない。そこで、管理職は自らが“先を読む”ことを常に意識して若手・新人への業務指示を行っていかなけばならない。
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