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週刊Neue Fahne

2013年12月09日号

管理職の役割は部下の役割認知を育むこと

 ある経営者が部長級の会議で社内の「火の用心」を呼びかけたところ、部長が課長たちを集めて「火の用心」の重要性を語った。すると課長は係長を集めて「火の用心」と繰り返し、係長は社員に向かって「会社から火の用心…との指示がでている」と語ったという。これは伝言ゲームのような「笑い話」だが、企業組織で発生しがちな現象だ。
 自らの役割を認識することなく、単に上からの指示を「オウム返し」しているに過ぎなということが起こる。恐らく、こうした組織では実際に現場で火災が発生しても、初期消火もすることなく火を見ながら社員が「火の用心」と叫ぶのではないだろうか。
 
 この「笑い話」に出てくる部長・課長・係長もそれぞれが自らの役割を果たしていない。職位が上位になれば当然にもその職務内容の抽象度は増してくる。ビジョン(理念)、方針、戦略、戦術、戦闘という具合に下位にいけばいくほど、より具体的な行動展開が必要になる。
 企業組織であるならば、この行動展開を正常に機能させていくことを司るのが、各級の管理職ということになる。しかし、「笑い話」に出てくるそれぞれの職位の者たちは、下位に向かって指示や目標に対して具体的に「それぞれの意味」「何が必要で」「それぞれが何をしなければならないか」を伝えていないということになる。

 企業組織では各位・各人が自分の役割を理解していなければ、今は堅調な業績を保っていたとしても早晩に傾く危険性がある。役割とは自分の担当業務をこなすことだけではない。会社組織では部下がいうべきことをいい、上司は聞くべきことを聞いて適正な指示や判断を行うということで、相互の役割が成り立つものだ。
 管理職の役割で重要なことは、決して上からの指示の「オウム返し」や「上から指示があったから仕方がない」などという態度をとらないことだ。
 営業部門であるならば、第一線の戦闘現場の業務を担う者が収集してくる情報が会社の帰趨を左右するものだ。何故なら第一線が一番詳しい情報を持っているからだ。この情報がなければ、どのような目標や方針を設定しても、必ずどこかで組織に軋みが生じ、歯車が狂いそれぞれがバラバラな動きを始めてしまうものだ。

 管理職はその役割として会社方針を貫徹させていくため、部下に「下問」し部下の意見を吸い上げ、自らも上層部に対して、意見や提案をしていく役割を認識しなければならない。管理職はそれぞれの立ち位置で、自分の果たすべき役割をしっかりと認識しなければならない。それぞれの役割意識が浸透すれば、現場で察知したビジネス環境の変化や問題に、素早く対応できる組織に成長することができる。

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