2013年11月25日号
管理職として職位が上位になるにつれ、その職務範囲の抽象度は増してくるものだ。上級管理者は経営者の代行役として社長を補佐し、経営目標の戦略策定に携わり、部門の事業計画立案、企画開発、ビジョン設定と方向性の提示を行うという役割を負わなければならない。つまり、経営の代行ということだ。当然にも相応の権限付与とともに責任も増してくる。
ただし、この役割に対して「上級になったから…」というのではなく、企業組織において管理的立場に至った段階で意識的な習得に向けた努力が必要になる。管理職の日常的な役割意識の反芻が、個々の管理職の能力向上に資するとともに企業組織全体の体力強化に直結する。
ここで重要なのが、「経営陣のいう通りに業務を遂行するだけ」という発想に決して陥ってはならないということだ。「経営陣の指示通り…」だけを心がけているようでは、経営者を「代行」することなどできはしない。
経営者の「代行」としての役割は、経営環境の変化とともに日々に変化し、企業の成長段階に伴っても進化してくるものだ。
企業組織の成長段階は個別だが、一般的にいえることは経済が成長・拡大することが前提とされていた時代には、社長ひとりが情報を収集、分析し、経営判断を下すことで事が足りていた。
こうした時代では社長の「代行」である管理職は、社長の意思決定に従い、社長に代わって業務を遂行する。これで十分に「代行」役を果たすことができた。ある意味で非常に牧歌的な時代でもあったともいえる。ところが経営環境の移り変わりに伴い、管理職の役割は激変している。このような「代行」役は、「組織へのぶら下がり」と揶揄されるまでに至っている。
経営者の代行役として管理職に求められているのは次の3つの役割に集約されるといえる。
1.自らが課題を見つけ、解決
世の中の変化のスピードに合わせて、素早い経営判断。経営者感覚を持って、会社の問題を発見、解決する。
2.自らが目標を達成
部下に成果を上げさせるため、自己の目標設定を支援しより高い目標に向けた方向性を示す。
3.自らの仕事を通じた育成
組織力を発揮して、未熟な部下一人ひとりを鍛え能力を伸ばし、会社の利益に貢献する意識を持たせる。
至極当たり前と思われる「3つの役割」は、「言うは易く、行うは難し」で、仕事と収入の保証を前提とした「サラリーマン的意識」からの敢然とした独立していく発想がなければ役割を果たし切ることはできない。
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