2022年05月16日号
変化が激しい時代では過ぎ去った過去を懐かしんでも意味がない。当然のことながら過去を変えることはできない。しかし、誰でも歴史(自分の過去の行いも含め)を踏まえることで、いま現在の自分の行動を変えていくことはできる。時代認識においては単純に過去から現在を時系列に辿っても意味があることではない。
あくまでも「現在」の状況を起点にして、発生している事柄の背景や歴史的経緯から振り返ることが重要となる。昨日を憂いていては、何も始まらない。今日の自らの行動を変えていく勇気を持つことが必要となる。とりわけ中高年に差し掛かる者にとっては、この行動変容に向けた勇気を振り絞らなければならない。
自らの行動に変容をもたらしていくためには、周囲の人びとからの声(ネガティブ・フィードバック)を率直、謙虚に受入れる姿勢が必要となる。言い換えれば他者から学ぶという姿勢だ。謙虚かつ真摯に学ぶ対象は、自分よりも年上と限らない。仮に自分よりも一回りも二回りも若い世代からも「学ぶべき事柄がある」と認識したならば、率直に教えを乞わなければならない。
これは「社会から学ぶ」ということにつながっている。往々にして企業組織で一定の経験と多少の成功を重ねた者は、自分の経験則に頼りがちになる。この経験則は得てして傲慢の火種にもなる。この火種は時として自分の存在を誇示する我欲に火をつける。我欲が一旦燃え上がると手が付けられない。周囲からの健全なフィードバックさえ受け入れられなくなる。そしていつしか我欲は妬みと嫉みを誘発し、周囲の声がますます耳に入らなくなるという悪循環に陥る。
企業組織の働きにおいては、常に自らの言動や行為を振り返る内省的な姿勢を堅持しなければならない。組織において己の行為・行動、言動に対して無頓着な者、無責任な者は真っ当な組織人として扱われることはない。この種の者に対して周囲は「言っても無駄な奴である」と認識することになる。
さまざまな局面において周囲からのフィードバックを年齢や性別にかかわりなく受け入れることができなければならない。こうした行動は常日頃から自分の本当の強みはどこにあるのか、自分に足りないのはどのような面なのかを認識することにつながる。そして何よりも自分とは異なる価値観を許容することもできるものだ。
異なる価値観を許容することは自らの問題意識の検証にもつながり、他者からの教えを乞う勇気の源泉ともなる。問題意識を持つということは発生している事柄や自らの行動に対し、吟味する思考回路を持ち続けることでもある。
この吟味する思考過程が自らの日常業務行動を変えていく「学び」に直結している。また、発生している事柄に対して問題意識を持つことで、周囲からのフィードバックが自らの「学び」に対するアドバイサー(教師)であることに気づくことができる。
一覧へ |