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週刊Neue Fahne

2021年11月15日号

高齢者雇用と中高年の再就職 −10−継続雇用に向けたマインドセット

継続雇用制度により企業の多くは、“継続雇用者が処遇低下や肩書が無くなることにより、モチベーションが低下して職場に悪影響を与えるのではないか”、と危惧している。同時に“生産性と人件費コストのバランスが取れない”と不安でもある。しかも、「高年齢者雇用安定法」の改正で努力義務とはいえこの状態がさらに5年延長されるならば、企業はいよいよ継続雇用対策として継続雇用者に対する対処を真剣に準備しなければならない。現状の「70歳定年延長の努力義務」は、近い将来「義務化」されることを想定しておく必要がある。
  継続雇用の延長でまず考えられるのが、従業員の高年齢化が組織に与える弊害だ。継続雇用に移行した人材の配置転換等の措置を講じることも必要となる。何故ならば、長期にわたり同じ業務に就く人材の固定化は、若手・中堅のモチベーション低下を招くことになるからだ。現実問題してすでに若手・中堅から見たならば、中高年の先輩社員の存在が「働かないおじさん」と映りはじめてさえいる。

  最近、頓に「働かないおじさん」についての論評が様々なところで賑わっている。「働かないおじさん」と揶揄される人材は、一昔まえにいわれた“ITやデジタル化に疎い”ということでもなければ、“仕事をしている振りをしているが、実は何もしていない”という「不良人材」を指しているわけではない。むしろこの逆で本人たちは、いたって面目で極めて実直に従前からの職務スタイルを変更することなく繰り返している。
  つまり、自ら与えられた業務は一応に熟しルーチンワークを繰り返すがそれ以上のことをしない(できない)。また、継続雇用に移行する前に管理職の肩書であったとしても、部下の行為・行動に対し真剣に向かって対峙したり、必要に応じて諫めたり批判をすることなく放任しているため部下から信頼されていない等々だ。要するに部下や周囲に対する配慮に欠け、自らに与えられた業務については、熟すが新たな事柄へのチャレンジに二の足を踏むという仕事姿勢ということだ。

  今日において一見すると可もなく不可もない働きに徹している継続雇用の予備軍である中高年人材は、意地悪くいえば与えられた業務を熟すという意味において“いい人達”でもある。しかし、企業規模の大小を問わず、この種の働き方で済まされてきた時代は、残念ながらとっくに過ぎ去っている。本人たちの意図に関わりなくこの種の“いい人達”が継続雇用として職場に堆積されてくることが、これからの時代において職場全体の活性化を削ぐことになることが明らかだ。
  さらにいえば、今現在において自らに与えられた業務を粛々と熟すが、これからのビジョンを提示できない中高年人材は、職場で中核的な業務を担う若手・中堅社員から「働かないおじさん」として扱われることが必定である。何故ならば、与えられた業務を粛々と熟すこととは、“事なかれ主義”と同意語に他ならないからだ。

  企業内において役職や肩書に囚われず、組織性を維持しながらも一人の“独立した企業人”的な意識を堅持している者が継続雇用や高齢者雇用に移行したならば、さほどパフォーマンスやモチベーションが変わらないだろう。問題となるのはさほどの専門性もないが、それなりのポジションに収まっていた管理職層の継続雇用への移行だ。
  管理職であった者が継続雇用に移行することを契機として“事なかれ主義”になるわけではない。そもそも日常の業務行動において状況変化への対応能力の欠如している管理職の存在を放置していることに問題がある。直截にいうならば継続雇用の拡大にともなう各種の弊害を危惧するのであれば、今の段階から管理職への登用を含めた社内人材の昇進昇格や給与体系の再考から人材育成等の再構築まで、人事システム全般の転換を進めなければならない。併せて、管理職層に対して「定年後も継続雇用で雇用される」という安易な気持ちを払拭させるマインドセットが必要となる。

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