2021年03月22日号
テレワークの下で部下の行動把握が難しくなったことを理由にあげて、マイクロマネジメントに走る上司がいる。要するに「微に入り細を穿つ」ではなく、「重箱の隅をつつく」という対応だ。こうした上司による部下への行動は、潜在的なマイクロマネジメント指向が「テレワーク」により顕在化したことになる。
企業組織において上司は部下との関係で競争心などを抱いてはならない。まして、部下への対応において「沽券に関わる」などという発想を微塵も抱いてはならない。いうまでもなく組織上において上司は部下を使う立場にある。これはあくまでも組織における上司の役割として基本である。一方で上司は部下から「上手に使われるということも自らの役割の一つである」ということを意識していなければならない。
上司が「部下に使われる」というのは、上司として「自分の力を部下に利用させてあげる」ということである。これは部下に対して適切に権限を移譲しながら、部下の職務能力を向上させていくことにもつながる。企業組織を巡っては様々な組織論が展開されている。しかし、あくまでも基本は機能別組織として構成されている。従って、企業組織の仕組みの中では、部下がどんなに意欲を持っていても、果たすべき役割が限定されて「できない仕事」もある。
こうした状況におかれている「意欲のある部下」に対して、上司が自分の権限を使って部下に仕事をさせることが、「部下に使われる」ということである。前提となるのはあくまでも「意欲のある部下」に対してであり、部下のいうことを「誰彼問わず聞く」という意味ではない。この点を間違える上司は部下から見て実に「御し易い」存在となり、部下から「馬鹿にされる存在」となる。
往々にして部下から「馬鹿にされる存在」の上司に限って、組織体の意味を解せず単に組織内での上下関係にこだわるなどの醜態を見せるものだ。「部下に使われる」とは、部下に対して「上司のパワーの使い方」を教えることである。実はこのことが部下に対して「企業組織の仕組みを教えること」にもつながる。つまり、何処をどのように押せば、上司が動き結果的に組織が動くのかということである。
当然のことながら「意欲のある部下」は、自分が企業組織を通して実現したい何がしかの事柄やそれに向けた提案を持っている。それが現状の組織のシガラミや体質によってストレートに実現できないもどかしさも感じているものだ。
部下は上司の日常的な行動の観察を通じて組織を動かす術を学んでいくものだ。もちろん「部下が上司を使う」ことは、部下がリスクを負うことでもある。なぜなら、部下が上司を使うからには、部下の失敗は上司の失敗ということになるからである。そこで、失敗のリスクを十分に考えさせ、検討させたうえで、チャンスを与えることが、上司の大きな役割となる。上司は仕事でチャレンジしようとする部下に対し、最大限の支援をすることだ。
この支援は上司が「部下に使われる」度量でもある。部下に「もっといい仕事がしたい」と思わせる前向きな働きかけである。どうすれば「上司の力」を上手に利用できるのか。それを部下に学ばせることで、部下は上司を通じて自らが組織を動かせることを実感できる。
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