2020年09月07日号
ジョブ型雇用での働き方の基本は、「自分は雇われ人である」という発想から脱却することである。つまり、自分に課せられた仕事を他人に任せっぱなしにしない。そして自らが果たすべき事柄に対して責任をもって自己完結させていくという姿勢が重要となる。ただし、これは仕事を唯我独尊で進めるという意味では決してない。
同時にジョブ型雇用での働き方では、一人ひとりに周囲を動かしていく力が発揮できるリーダーシップが求められることになる。具体的には自分の周囲にいる人たちが仕事上の困難に直面しているのであれば、見て見ぬふりをせずに黙ってサポートする。緊急事態の場合には自分の仕事を一旦中断してでも周囲の問題解決を優先させる。自分に課せられている業務で想定外のアクシデントが発生した場合には、問題が大きくならないなうちに報告・相談・連絡を怠らないという姿勢の堅持である。
雇用形態がどうであれ、周囲に対する配慮ある行動は仕事上の単純な「スキル」などではない。こうした行動は企業組織で働く上では当たり前の「仕草」であるといってもよい。しかし、一見すると当然と思われる「配慮ある働き」であっても、企業組織の一員としての自分の役割を果たすという「覚悟」がなければ、それは日常行動にあらわれないものだ。同時に日常行動の中でこうした「配慮ある働き」を意識的に訓練していかなければ、自分自身の力として蓄積されない。
こう考えると企業組織の中での仕事の出来、不出来は、個々人の「ビジネススキル」以前に、一人ひとりの「覚悟と訓練」で決まってくるということでもある。仮に優れた「資格」や「職務能力」を持っていたとしても、「覚悟」のない者にとっては、それらは宝の持ち腐れとなってしまうものだ。
こうしたビジネス上での「覚悟」とは何か。一言でいえば常に何事も当事者として立ちふるまうという「オーナーシップ」感覚を身につけていくということだ。つまり「自分自身が当事者本人であり、役職や立場を問わずオーナーシップを発揮しなければならない立場がある」という意識を持ち続けていくことだ。この意識が気迫をもって厳しい要求でも受入れて物事をやり遂げる(実行する)源となる。
姿勢を持つために必要な能力とは、好調な時も不調な時にも健全な判断に基づき、ポジィティブな思考で周囲の人びとに活力を与え力である。また、周囲の前向きなエネルギーを引き出し、「イエス」「ノー」をはっきりさせる胆力である。これは仕事に対して情熱を持ち、すべてのことに深い関心を持ち、精力的に働き、自分の成すことの価値を信じて自らのワークモチベーションともなる。
リーダーシップもオーナーシップも天性として備わっているものではない。自らの仕事を狭い視野で捉えるのではなく、全局の中で位置づけ、周囲に対して受け身にならず、自分が率先垂範で仕事に取り組むという「訓練」によって身についてくるものだ。
企業組織において自分自身は常に当事者でなければならない。ジョブ型雇用とは「経営を代行する」という気構えを一人ひとりに問いかける働き方ということだ。そして、この気構えは第三者意識を払拭していく主観能動的な行動の繰り返しによって醸成される。
一覧へ |