2020年01月06日号
企業の組織性は部門間の連携と相互の情報共有によって規定される。このため上下間の報告・連絡・相談の弛緩は組織を衰退させていく。とりわけ報告の重要性を理解せず適時、的確な報告が習慣化されていない組織は、徐々に組織性を失い結果的に内部から瓦解することになる。
組織内に部門間の連携と相互の情報共有の欠如が蔓延している組織とは、必然的に現場マネジメントが機能していないことを意味している。現場マネジメントを担う者は、「報告は組織の基本であり、適切な報告がなされなければ、組織は機能しない」ということを自覚し、職位・職階を問わず適時、的確な報告の重要性を強調し続けなければならない。
組織内に「報告のできない状況」や「報告のできない者」が存在しているならば、現場マネジメントは一刻も早く原因を発見し改善に取り組まなければならない。報告は一つの習慣でありビジネスマナーでもある。組織内に「報告できない状況」を放置しているならば、それが組織体質として定着してしまうことになる。
組織内の「報告のできない状況」は、往々にして組織を構成するミドル層の姿勢に起因している場合が多い。なぜならば、職位において自分は部下・後輩から「報告を受ける側である」という固定観念が染みついているからだ。そこで、自らが自分の上位者に対して「自分が報告をする側でもある」という立場性を再確認し、報告をするタイミング、ポイントなどについて様々なケースを検証し、報告の習慣づけを行い下位に対して示していくことが大切である。
報告とは、そもそも下位の側から積極的にされるべきものである。上位の側に促されてからはじめて報告するというものではない。そこでビジネスの基本ルールとして、「仕事は上司からの指示で始まり、上司への報告で終わる」ことを、はっきりさせる必要がある。つまり、どんな仕事も、報告がなければ終わっていないという姿勢を徹底していかなければならないということだ。
同時に報告を受ける側は報告をする側に対して「報告した内容が組織にどのような影響を与えているのか」を実感させていく必要もある。この実感がなければ「報告は自発的にするものだ」という意識はいつまでたっても形成されることはない。よい情報ばかりではなく、悪い情報の場合でも、迅速な報告があれば、報告した行為そのものをほめることが大切である。
報告する側の報告内容にムラがある場合には、内容はともあれ報告したことそれ自体を評価して、報告に対する意欲を高める必要もある。報告する側は報告された内容が組織の中に伝わることで、報告する行為の重要性に気づくことになる。そして、少しずつ報告を怠らないようになっていくものである。
報告する側が報告を厭う心理の中には「報告の受け手の機嫌を損ねるのではないか。叱られるのではないか」という心配と自己保身があることは確かだ。そこで現場マネジメントは、報告と責任問題とは別であるという態度を、日常的にはっきり示すことで安心感を組織内に醸成しなければならない。
一覧へ |