2019年11月11日号
企業組織で周囲を牽引していくためには、常に周りを変革(現状に甘んじない)の渦の中に巻き込んでいく行動をとらなければならない。言い換えれば、自分自身が「出る杭」になることである。「出る杭は打たれるが、出ない杭は腐る」とよく言われる。現状に甘んじない姿勢を貫くとは、周囲から打たれる覚悟を持つということだ。
自分自身の行動について内省と整理を繰り返しながら腹をくくることが必要である。周囲の声や評価を気にしていては、現状維持に陥るだけである。改革(現状に甘んじない)の潮流をつくりだすのは、組織内の地位や役職まして勤続年数に規定されるものではなく、組織が抱える問題に「気づいた者」だけである。
組織が抱える問題は経営陣から与えられてわかるものではない。また、課題を与えられてから解決することでもない。自分で読み取る努力をして発見するものである。こうした努力もしないで、「経営陣の方針が不明確だ」などと不満を持つものは、単なる面従腹背の行動姿勢をとっていることになる。経営陣の方針は、会議や打ち合わせや日常的な会話、行動の中に表出されるものだ。
ただし、今日の激しい経営環境の変化では方針が揺れる場合もある。時には抽象的な内容となり、朝令暮改と思われるようなこともある。仮に方針が不明確だったとしても、「だから、どうしていいかわからない」という姿勢では自らの職責を果たすことはできない。自らの考えとのズレが生じているならば臆することなく、方針のすり合わせを回避してはならない。
方針のすり合わせを回避することは、自らを単なる「作業者意識」に埋没させることになる。これは「問題意識」を持たずに唯々諾々と日々を繰り返すことと同じである。主体的な判断を行うことを回避し「作業者意識」に逃げ込むことは非常に安易な道であり企業人としては失格である。一方で「方針が不明確だから、自分の考えどおりに勝手に進める」という唯我独尊は、結果的に経営方針と齟齬を発生させるだけではなく、全く反対の行動をとる恐れがある。
仮に方針に納得できないのであれば、それを放置して納得のいかないまま従うのではなく、自分が納得できるまで確認していく姿勢を堅持しなければならない。組織方針は組織の置かれた外部・内部環境の状況に応じて変わってくる。従って、常に「いまどのような方針を展開すべきか」という問題意識を常に自分自身で堅持しなければならない。
「本来あるべき姿は何か」「現場で現実に起こっていることは何か」を常に考えた問題意識を持った仕事への取組み姿勢は、周囲の人間を変革行動に巻き込んでいく能力に通底することになる。
周囲に対して自らの問題意識を臆することなく開示し、熱意を持って変革の必要性を訴え、自分が取組む姿勢を周囲に見せていくことが、周りを変革(現状に甘んじない)の渦の中に巻き込んでいくことにつながる。大切なことは問題を発見し解決に向けた行動を自らが起こすことだ。そしてこの行動は時として「出る杭」となることも覚悟しなければならない。
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