2018年10月22日号
管理職にとって部下育成の近道は存在しない。なぜならば、育成とは教育・訓練の蓄積であり即効性が期待できないからだ。つまり、すぐに成果が出るものではない。このため育成を施す側に忍耐が求められる。逆にいえば一見して成果が実感できない育成行為に管理職が耐えることができるか否かに部下の成長がかかっている。
部下育成に時間がかかることに苦痛を感じ管理職は、軽々に部下育成の必要性を口にすべきではない。部下育成は管理職が果たすべき必須条件である。これを厭う管理職は「管理職としての資格要件」を満たしていないことになる。さらにいえば管理職は「部下の未成熟」を業績が向上しない理由にしてはならない。
管理職が部下を育成するに当たり、先ず確認すべきことがある。それは管理職には“自分の権限において、部下を動かして企業組織が必要とする成果を上げる立場にある”ということだ。この立場性が管理職に部下に対する指示、命令、要求に合理目的性を付与することになる。ただし、これは管理職の「育成責任」に裏打ちされたものでなければならない。
責任を自覚しない管理職に限って、部下の甘えを黙認し毅然とした仕事の与え方をすることができない。悪くすると、部下に“仕事をお願いする”という姿勢になるものだ。しかし、こうした姿勢では部下に阿ることになり決して部下の成長にはつながらない。
管理職は部下に指示・命令を貫徹させるために、“組織的に行う仕事は組織の必要性にもとづいて行う”という原則を堅持することだ。原則を堅持することで“何をやるべきか、何を優先すべきか”が明瞭になってくる。仮にこの原則があいまいになれば、個人の都合や情意が幅を効かせることになる。
管理職は部下指導においてまず、部下に対して“自分の個人的な動機やそのときの気分・感情ではなく、常に組織の必要性にもとづいて仕事の指示をしている”ことを理解させる必要がある。つまり、部下育成の出発点は自らが発する仕事上での指示・命令を部下に納得させることである。
管理職が当然に理解している「組織としての必要性」や「組織としてやるべきこと」を部下が十全に理解しているとは限らない。それは管理職と部下では視野や視点が異なるため当然である。管理職が前提とすべきは“部下は上司の指示・命令を正確に理解していない”ということだ。
管理職は抽象的に“部下を育成する”などを繰り返すのではなく、育成に大前提となる指示・命令に対する具体的な説明を行う必要がある。その際に重要なことは以下の視点だ。
・仕事を行う正当性と意味を明確にする
・仕事に係る情報を正確に伝える
・仕事の見通しを指示す
・仕事に対する評価基準を明確にする
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