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週刊Neue Fahne

2018年10月01日号

管理職の部下への“パワー(権威)”行使とは何か

 会社を含め組織においては否応なく「上下関係」が発生するものだ。しかし、会社組織での管理職(上司)はこの「上下関係」を“組織から一時的に賦与されている関係に過ぎない”ということを決して忘れてはならない。同時に管理職(上司)が部下と接する場合に前提とすべきは、「部下育成」を自らの役割の中で最優先課題と位置づける必要がある。
 管理職(上司)にとって部下とは“会社から預かっている人材という最も重要な経営資源”であり、会社に貢献する戦力として育てる責任があるからだ。今日パワハラ行為で指弾される管理職(上司)の諸行動は、この関係性に対する無自覚と無知によるところが多い。端的にいうならば、パワハラを引き起こす管理職(上司)は、部下育成の概念が欠如していることを意味するだけではなく、部下を「私物化」していることになる。

 管理職(上司)が自らの指揮の下で“部下を動かす”ないし“使うことができる”のは、あくまでも業務遂行上の指揮権に過ぎない。当然にも指揮権を発揮するとは“パワー(権威)”の行使である。しかし、この“パワー(権威)”は、会社組織への利益貢献のためだけに使うことが許される。会社組織への最大の利益貢献とは、自分以上に利益貢献できる可能性のある人材を発掘し自分を超えていく後輩を育成することにある。
 管理職(上司)が自分の力を誇示するためや、私利私欲のために、あるいは私用のために部下を使うのは、パワーの乱用であり、部下を「私物化」することになる。これらは至極当然のことに思われる。ところが、実際の職場で管理職は知らず知らず、“パワー(権威)が付与されたものに過ぎない”という認識から逸脱し、あたかも自分自身に備わっているかの錯覚をおこすことになる。

 例えば、瑣末なことだが就業時間後に自分よりも先に退社する部下に対し、“快く思わない感情を抱く”などはこの典型である。また、ことあるごとに“部下を連れて飲み歩く”なども恣意的に部下を“使う”部類に入る。とりわけ、今日の若手社員は、極めて合理的に発想するものである。“上司からの誘いも仕事の一環である”などという根拠のない組織への帰属意識に希薄である。
 まして、ご馳走してくれるならまだしも、上司の武勇伝や愚痴をさんざん聞かされた挙句に割り勘を要求されようものなら、間違いなく「ダメ上司」のレッテルを張ることになる。こうした愚行を犯してしまう管理職(上司)は、根本的にマネジメントにおける自らの役割認知を理解していないということだ。

 部下との関係性において管理職(上司)が肝に銘じなければならないことは、“組織からあずかった部下を伸ばす”という一点にある。組織内における「上下関係」もこのために存在しているのである。従って、管理職(上司)は“部下を肯定する”という 基本スタンスを堅持しなければならない。このためにはまず、自分自身が“自らを肯定する”ことができなければならない。自らを肯定することができない者には、他者を肯定することもできるはずがない。他者を肯定できるということは、他者と己の関係を相対的に捉えて違いを尊重することができるということだ。
 管理職(上司)にとって部下との対人関係において不可欠なことは、一人の人間として部下を肯定したうえで“この部下をどう伸ばすか”を考えることである。この観点を管理職(上司)の基本スタンスとすることが、正しい“パワー(権威)”行使の出発点になる。

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