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週刊Neue Fahne

2018年06月04日号

マネジメントに問われるのは「正解」ではなく“最適策”の検討

 企業組織に限らずあらゆる組織体で発生する問題は、過去との類似性があったとしても常に新しい問題を提起するものである。組織内で日々発生する問題は万古不易ということがない。特に組織内の人事マネジメントは対象とするのが人間であるためなおさらだ。
 そもそも対人関係は自然科学と異なり普遍的な正解などは存在しない。対人関係をめぐるマネジメントにおいて、過去との類似性に基づいて過去と同様の手法を単純に踏襲し解決しようとしても上手く解決できるとは限らない。

 過去との類似性のみを根拠に人事マネジメントを展開しようと考えるならば、「経験主義」という隘路に陥ることになる。仮に過去によく似たケースがあったとしても、時間と環境が変化しているため同様な手法は通用しないものだ。人間が介在する対人関係のマネジメントにおいては、現象的な類似性があったとしても“決して同じ問題ではない”というスタンスをとることがマネジメントの原理原則だ。
 構成メンバーが同じであったとしても個々のメンバーには、時間軸という変化が付きまとうため意識も過去と同様ではない。併せて、当然のことながら企業組織をマーケット等のビジネス環境も変化している。しかも今日ではこの変化スピードに加速度がついている。

 企業組織の集団内で発生するマネジメント問題は、自然科学的な思考で解決できるわけではない。人事マネジメントでは、感情や心理の要素も大きく影響する。下世話な表現になるが、妬み、嫉みという極めて厄介な“情意バイアス”も存在する。過去に上手くいった例が桎梏となり今回は失敗する可能性もある。過去に誰しもが疑わなかった指導手法が、今日では「パワハラ」の指弾を受けるとも限らない。
 マネジメントする側にとって「昔は○○であったが…」との繰り言は、愚痴以外の何物でもなく、まったく通用しないと認識しなければならない。従って、マネジメントに携わる者は過去の経験に縛られることなく、今現在で最適と思われる行為・行動をとらなければならない。つまり、マネジメントでは「正解となる解決策」を見つけることではなく、「最適と思われる策」(ベストアンサー)を適確に見つけて、実行することである。

 現場では今も昔も上司と部下との間で「コミュニケーションがうまくとれていない」という問題が大きな問題となっている。この問題に対して仮に「コミュニケーションの強化」と称して定期的な「飲み会」を上司が設定しても意味がない。コミュニケーション強化=飲み会などという短絡思考は20数年前であれば通用したかもしれない。しかし、今日ではこの種の発想は逆効果でさえある。
 従って、人事マネジメントでは短絡思考に陥ることなく、部下の抱えている状況や課題をつぶさに観察して、個別の対応をとらなければならない。一人の部下に通用したことが他の部下には通用しない。管理職は職場環境や部下の性格を分析しつつ、ベストな対応策を見つけるしかないということだ。人事マネジメントの限らずマネジメント手法には不動の正解など存在せず、常に状況対応である。

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