2017年12月04日号
現場マネジメントでは「自分がやれたこと、やってきたことは部下もできるはずだ…」との思い込みをしてはならない。とりわけ若手新人に対しこの種の「要求」をすることは不可能であり、結果的に「無いものねだり」に陥ることになる。「無いものねだり」の繰り返しは一歩間違えばパワハラを誘発させてしまうことにもなる。何故ならば、20代から60代までの幅の広い世代が混在する組織では良し悪しは別問題して価値観が異なっているからだ。
単純な世代論ではないが10歳も歳が違えば、育ってきた社会環境が異なるのは当然のことである。そこで、価値観に違いが存在していることを理解したうえで、「機能集団」として構成されている組織をいかに効率よく機能させていくかという課題に注力しなければならない。
若手新人の育成の基本は、一日も早く「自分の頭を使って考え、動いてもらうようになってもらう」ということに尽きる。これは若手に限らず中堅層の社員にも当てはまる。いつまでたっても「どうしましょうか…」と繰り返している中堅社員は、会社組織の戦力にはならないばかりか、新人社員に悪い影響を与えることになる。中堅層を構成する社員に対しては、“会社は何を求め、どのような働きを期待するのか”という点を明確に示していくことが重要になる。
この期待する事柄の基準になるのが「会社理念」であり「会社ビジョン」であることはいうまでもない。あくまでも一人ひとりの「働き」や自己の将来にとって、会社が掲げる「会社理念」や「会社ビジョン」がどのように作用していくのか、自分にどのような関わりを持ってくるのか、という問題意識を持たせていくことが重要である。
中堅層も含めた若手新人社員の育成に当たって、全員一律的な育成を思考するのは、逆に組織を弱体化させてしまう危険性がある。なぜならば、一律的育成は個々の成長度合いをカウントしない「悪しき平等」に陥る危険性を含んでいるからだ。社員の「育成」には、一人ひとりに“公平な機会”“機会の平等”を提供するが、結果が「平等」である必要はない。あくまでも一人ひとりの自覚の度合いや自助努力を前提にした、個別課題として提示していくことが重要だ。つまり、育成とは一人ひとりを見極めて組織的に展開していく必要があるということだ。
この観点は育成を「投資」として考えるか否かということでもある。育成は短期的な利益を期待した「投機」であってはならない。会社組織の将来の資産を増やすために長期的な視点で行う「投資」であり、“人材がたまたま定着した結果により会社利益に貢献した”という偶然性に依拠することを排除していくことでもある。
会社に限らず組織構成においては、職位が上位になればなるほどその役割の抽象度は増し、組織が掲げる目標が自らの目標がシンクロし始める。一方で下位になればなるほど個々人の役割は具体的な事柄にシフトして組織の掲げる「目標」から遠ざかるものだ。そして必然的に職位の下位の者は組織全体が掲げる目標から乖離し始め、「いま自分のやっている業務」だけしか視野に入らなくなる。従って、現場マネジメントが育成を考える場合には、「部下は全体の目標から遠い存在」ということを意識しながら、一人ひとりに個別課題を設定させながら成長度合いに見合った育成計画を立てる必要がある。
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