2017年11月13日号
全ての社会生活においてリーダーシップが求められる。とりわけ共通の目的のもとで集う企業組織では、全体を牽引する役割を果たす機能としてリーダーシップが求められる。高度成長期の日本のビジネスシーンでは、戦国時代の武将や帝国陸海軍の将官による戦闘現場での部下統率を引き合いに出し、それぞれをタイプ分類して論じる傾向が出版物などでも多かった。こうした、リーダー像をタイプ分類する傾向は今も続いている。
ビジネス書ではしばしば「リーダーシップ」はタイプ分類される。“鬼軍曹”タイプ、サーバント”(奉仕者)タイプ、“メンター”(支援者)タイプという具合だ。こうしたタイプ分類は社会状況に大きく左右されるのが常だ。リーダーないしリーダーシップのタイプ分類化は、混沌とした社会状況とグローバル化によるビジネス環境の変化過程で、大方向を示してくれる水先案内人を無意識に求めてしまう「空気」なのかもしれない。
しかし、現場マネジメントでは「空気」に左右されず、企業の成長過程で必要とするリーダーとは何か、リーダーとして発揮すべき役割は何かを「特定のタイプや人物」に仮託することなく考える必要がある。これは企業組織の成長過程で組織を構成する一人ひとりの成長課題にも直結してくる。
「リーダーシップを発揮する」という意味を単純に指示や命令を出し、部下を思いのまま動かすこと、あるいは先頭に立って周りを引っ張ることであると理解する管理者が多く存在している。しかし、リーダーを役割機能と捉えたならば、これらは一つの側面に過ぎない。何故ならば企業組織ではリーダーに状況の変化に対応していく多岐の役割機能が求められるからだ。単純に部下指導、率先垂範、前線での指揮や士気を鼓舞する豪胆さがリーダーシップの証ではない。こうしたリーダーシップは“成長が保障されていた時”“GOALが決まっている時”には通用するだろう。
ところが状況への対応次第で結果が大きく異なる混沌とした時代には短絡過ぎる。リーダーシップとは、さまざまな状況の変化に対して周囲を巻き込みながら変化対応する「力」である。一言でいうならば「リーダーシップとは他者へ自らの影響力を行使できる力」である。
リーダーシップは個人のパワーに帰属するものではない。リーダーシップの有無を決定するのは、周囲がそのリーダー役割者から影響力を受けているか否かの認識に大きく左右される。部下の側が「リーダーの命令だから仕方がない」との思いで従っているようでは、部下に影響力を行使していることにはならない。職務上の権限でだけ、部下を従わせているに過ぎないのであれば、部下の行動は必ず「面従腹背」になる。
「リーダーシップ」で最も大切な視点は、周囲の認識や感情に対して敏感であろうとする行動をとっていくことだ。現場マネジメントでは自分自身のいまの状況・状態をメタ認知(客観的な自分理解)する能力を不断に磨く姿勢を堅持する真摯な行動が大前提となる。
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