2017年10月30日号
企業における中堅層の役割は一言でいうと「上下のパイプ役」という一点に尽きる。つまり、上席者のブレーンとしての意識をしっかりと確立し、組織を構成するメンバーの中心に位置しながら積極的に上席者を補佐する。そして、新入社員を含む若手社員と自分の上席者との触媒機能を果たしていくことだ。こうした役割を果たす中堅層の厚い組織は、上下の意思疎通が円滑となり足腰が強くなる。中堅層の存在が、組織の帰趨を決定するといっても過言ではない。
中堅層は若手・新人の気持ちや考えを汲み取り、それを管理職に具申しつつ、片や管理職の指示や考えを若手・新人にわかるように過不足なく伝えたりしなければならない。仮に中堅層が管理職と距離を置き、比較的年齢の近い後輩たちと同じ意識のままの発想しかできないでいるならば、それは単に「仲良しクラブのなかの年長者」の一人でしかない。
現場マネジメントにとって中堅層は、本来的には組織目標を達成するための戦力としての機能である。管理職の指示命令を単に忠実に実行するだけではなく、管理職の意図する事をくみ取り、積極的に補佐しながら若手・新人社員をリードする役割を担うことが期待される。今日では管理職の職務内容は管理面に限定されることなく、プレーイングマネジャー機能が一般的となっている。このため、すべての部門や部署全体への目配りには限界が生じることになる。
中堅層はこうした管理職の行き届かない穴埋めをし、ときには管理職の代行機能もしなければならない役割を担うことにもなる。中堅層の中には「役職者として権限もない自分が、何故管理職の代行をしなければならないのか…」と疑問をもつ者もあらわれる。敏感な者は管理者を含む周囲からの「期待」を適確に感じ取ることができる。ただし、中堅層の全てが敏感であるとは限らない。
そこで、現場マネジメントは中堅層に対して「期待」を可能な限り具体的に示す必要がある。中堅層に期待する内容を列挙するならばおおよそ以下に収斂されるだろう。
・職務内容について熟知し、積極的な行動力、実行力を身につける。
・チームワークの確立に努め後輩のお手本として、報告、連絡、相談を適切に実行する。
・チャレンジ精神を持って仕事は責任を持ってやりとげる行動規範を身につける。
・大局的な視野に立ち常に問題意識を持って仕事の改善、改革に努める。
・仕事をこなすだけでなく、戦略的発想で積極的に仕事を創り出す。
・若手・新人に舐められず、模範となる職務能力と対人関係能力を身につける。
中堅層への期待の明示化は、現場マネジメントに欠かすことのできない基本である。現場マネジメントがこの基本的な期待内容を日常的に情報発信し続けることを怠ったならば、何時までたっても中堅層は、「仲良しクラブのなかの年長者の一人」というフィールドに留まることになる。中堅層が適正に育たず適正な階層化ができない企業組織は、結果的に管理職も育たない「烏合の衆」で終わることになる。
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