2017年06月26日号
新任管理職が意識しなければならないことは、「仕事上で必要なリーダーシップとは、単純に指示や命令を出し、部下を動かす」ということだけではないということだ。確かに管理職は部下に対して適時適確な指示・命令を発しなければならない。
しかし、これはリーダーシップの一つの機能側面に過ぎない。リーダーシップの発揮とは、地位や役割範囲とは直接的には関係なく、自分が仕事で正しいと思うことや情熱を感じることを貫くために他者に影響力を行使していく≠ニいうことだ。
他者へ自らの影響力を行使する¥鼾の基準は、リーダーシップを発揮する個人的パワーのみに限定されない。管理職のリーダーシップ発揮を決定するのは、部下が管理職から影響力を受けているか否かの認識度に大きく左右される。ある一人の上司が常に先頭に立って旗を振り、部下に指示や命令を出し、部下もこの上司に従っているとする。
部下の側が「命令だから仕方がない」との思いで従っているようでは、この上司は部下に影響力を行使していることにはならない。つまり、リーダーシップを発揮するのではなく、職務上の権限でだけ、部下を従わせているに過ぎないということだ。
指示や命令で部下を従わせる≠アとに発想に固執しているならば、リーダーシップを発揮するという意味を履き違えることになる。むしろ大いなる錯覚といっても過言ではない。この錯覚への囚われは、今日では「パワーハラスメント」の温床ともなる。「パワーハラスメント」は多くの場合に管理職が部下に対して、上手に影響力を与えることができないというジレンマの産物でもある。
「リーダーシップ」で最も大切な視点は、周りの人びと(部下)の認識や感情にどのように働きかけていくかということだ。そのために、いま自分の部下がどのような認識をしているか、どのような気持ちでいるか≠ニいう状況を正しく理解する必要がある。つまり、部下の認識や感情に対して敏感でなければならないということでもある。同時に部下の一挙手一投足をしっかりと観察していなければならない。
管理職が部下の状況を把握していくためには、自分自身のいまの状況・状態を認知することも重要となる。自分の働き、自分に課せられた役割や職務を果たしていくためには、ひたむきな情熱をもって臨まなければならない。簡単に答えが出る問題にだけ取り組むのではなく、難しい問題にもチャレンジしていく努力を怠らない。こうした管理職自身の働きが部下に信頼感を伝播させていくことになる。
自分に課せられた仕事の意義や使命について真摯に向き合う。そして意義や使命感を果たすために、まずは自分自身が真摯に考えて行動する。こうした管理職の行動や姿勢に部下は必ず信頼をもって迎えてくれるものだ。しかし、部下から信頼を得ることを自己の目的としてはならない。あくまでも真摯な行動に部下は信頼感を持つことになる。真摯な行動がリーダーシップの源泉でもある。
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