2016年07月18日号
管理職は「経営権の分担行使者」として職場を任されている。業績に対する責任は、数値で裏打ちされなければならないが、同時に基盤となる職場環境に配慮し、日常的に改革・改善に向けた取り組みを怠ってはならない。
ただし、職場環境とは単なる備品や機器の整備を意味しているわけではない。あくまでも会社組織の基本である「共通の目的に向かって、全体が貢献意欲を発揮する職場環境づくり」という意味だ。「貢献意欲」が醸し出されていない組織は、単なる烏合の衆と同じである。
一般的に職場環境とは“仕事がおもしろいと感じられ、活き活きした職場”であることが強調される。しかし、これは健全な利益が生み出されていることが大前提でなければならない。従って、部下を率いて会社利益に責任を負う管理職は、部下の就労意識に対して敏感でなければならない。仮に部下の中に「人生の時間を切り売りをして給料をもらっている」と考えている者がいたならば、徹底的に自らの就労観を対置して仕事の意味づけを説かなければならない。
もし、自らが「仕事とは時間の切り売り」であるという思いがあるのならば、即刻管理職を辞退することだ。さもなければ部下に対して失礼でもあるし、何よりも自らを欺瞞する行為になるからだ。
部下のやる気のなさに対して「文句ばかり言うな」「責任感が足りないから、覇気がないのだ」と怒鳴る管理職がいまだに存在している。しかし、こうした叱責で部下が思い通りに動いてくれることはない。「職場環境」の視点からするならば、叱責や批判が飛び交う職場は、一時の緊張感を生み出すことはできるが、長続きするものではない。比喩が不適切かもしれないが叱責や批判は、ある種の「麻薬」であり中毒化する。そして、最終的には疲弊した組織体になるのが必定だ。
そこで、管理職は自らの職場の状態確認を怠ってはならない。仮に以下の状況に異変が生じせているのであれば、早急に改善に向けた施策が必要となる。
■職場にけじめが充分についているか
・全員の態度、言動が礼儀正しい
・職場にいつも緊張感がみなぎり、規則が厳守されている
・安全教育が徹底し、整理整頓が行き届き、清潔である
■職場に相互支援の意識があるか
・健全な競争意識が存在しているが悪意のある紛争はない
・いつも上席者が社員同士のコミュニケーションの中心に位置している
・相互批判と相互支援に基づいた対話があり、意思疎通が図られている
管理職は職場状況を常に確認し“仕事の準備、計画、指示等を充分に行っているか”を反芻しながら自らの就労姿勢を職場に示していくことが健全な職場環境の維持に繋がっていく。管理職は部下に対して「やるべき仕事を明確にさせ」「仕事が組織にプラスになっているか」を判断基準として、適時に「適切な仕事を間断なく」与えながら部下への支援や協力を惜しまない姿勢を堅持しなければならない。
一覧へ |