2016年05月09日号
管理職にとって部下指導の鉄則は、決して“部下を放置してはならない”ということだ。管理職は自らの経験則として上司からの微に入り細に入りの指示を“部下が嫌う”と思いがちだ。時として「このくらいの事はいわなくとも分かるだろう」と部下に遠慮する場合もある。しかし、管理職の部下への遠慮は指導の放棄につながるものだ。
一方で“いわなくても分かる”部下が存在するならば、管理職と部下との間は同等のレベルに達していることになる。この種の部下の存在は管理職にとって喜ばしいことである。同時に管理職がいつまでもこの種の部下に対して上司然とした態度を取り続けるならば、部下の成長にとって管理職が阻害物になる可能性もある。
一般的に部下は管理職が発した指示に対し、3割か4割しか覚えていないものだ。従って、管理職はしつこいぐらいに指示を繰り返すことも必要となる。管理職は部下に対して仕事の指示や命令を徹底させるために、復唱・メモを習慣にさせる必要がある。これは若手・新人の部下に限ったことではない。たとえ自分より年長の部下に対しても遠慮してはならない。また、会議などで要領を得ない発言や抽象的な発言を繰り返す部下に対して、数値情報を含めた具体的な発言をさせ、誰にでもわかる言葉で発言させるように指導しなければならない。
これは部下に対して仕事の流れを理解させるということでもある。企業組織において仕事は次の4つの流れで構成される。
(1)部下から部下へ流れていく仕事
(2)上司から部下へ流れていく仕事
(3)部下から上司へ流れていく仕事
(4)会議、ミーティングを通じて流れていく仕事
「部下から部下」とは同僚から同僚へ、あるいは部門から部門を横断する流れである。「上司から部下」とは川上から川下への指示・命令の流れである。「部下から上司」とは川下から川上への縦の流れであり、文字通り「報告・連絡・相談」を意味している。そして「会議、ミーティング」とは他階層を含めて立体的に情報が拡散していく流れである。
管理職はそれぞれの場面で、この流れのチェック機能を果たさなければならない。当然のことながら管理職自身がスムーズな仕事の流れを展開しなければ、仕事の効率が高まることはない。また、部下に対して組織で仕事を展開するためには「4つの仕事の流れ」を把握することの重要性を理解させる必要がある。
管理職が部下に仕事の流れを理解させるとは、組織の一員として仕事を行うということを教えることであり、他者ないし他部門との連携の重要性を理解させることでもある。たとえば組織体では部門の違いにより、しばしば仕事上での衝突が発生することがある。このような時に管理職が問題の所在を掴み、しっかりとした仕事の流れを把握して適時に判断しなければならない。この行為を怠ると組織は単なる部門や部署間の利益代表者の集合体になってしまうものだ。
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