2016年02月22日号
企業組織では当然のことのようにコミュニケーション能力の重要性が説かれる。新卒中途を問わず採用においては真っ先に「コミュニケーション能力のある人材」が基準にあげられる。ところが、採用する人材に求める「コミュニケーション能力」を明確に規定している企業は少ない。とりわけ、新卒者に対して「コミュニケーション能力」を求めるわりには、既存社員の側の迎い入れ姿勢に弱さが目立つ傾向がある。
コミュニケーションは単に「会話が上手にできる」とか、「付き合いが良い」などという意味では決してない。あくまでも仕事を行う上で意思の疎通が取れるのかという点にある。また、指示内容を十分に理解して実行できるか否かの理解力も含まれる。この様に考えるならば管理職の側が、部下に対して明確な指示や仕事の目的を正確に伝えることができているか否かも問題にされなければならない。
往々にしていまだに「仕事は上司・先輩のやり方を見て覚えるものだ」などという意識から脱却できない管理職が多い。しかし、これでは「コミュニケーション能力」が備わっていることにはならない。職場マネジメントには正解が存在するわけではない。このため、マネジメントをする側に必要となるのは、一人ひとりの部下に対して“仕事とは自分から工夫し、日々改善していくものである”ということを理解させていくパワーだ。
同時に職場実践においては“正解は一つに限られるものではない”ということを教えることも重要となる。つまり、“仕事ではいくつもの答えが考えられ、いくつかの答えの中から最適なものを選択するものだ”という視点で主体的に物事を考える癖を持たせることが重要になるということだ。この段階で必要となるのが管理職にとっての「コミュニケーション能力」である。
ところが、部下とのやり取りのなかで一方的に「これはこうするものだ」という具合に、結論を先取りして指示のみを行う管理職がいる。確かに経験則で判断される暗黙知は存在する。しかし、部下に対しては「報告・連絡・相談」を求めるが自らは指示出しに終始して、部下に考える癖を与えない管理職の下では、文字通り「考えない部下」を増殖させることになる。
こうした職場環境の下で部下には“正解は上司が知っているのだから上司の指示を仰ぐことで仕事は早く回る”という思い込みが刷り込まれることになる。特に若手社員は早く簡単に正解をほしがる傾向が強い。そして、上司の出した答えどおりに行動してしまう。結果的に「いわれた通りに働く」こと以上のことが、できなくなってしまう。すると今度は上司の側が部下に対して“指示待ちで自分から動かない”と不満を持つという悪無限的な循環が生まれることになる。
指示する側は、部下のこうした指示待ち行動は、ある意味で最も合理的な行動でもあることを理解する必要もある。しかし、この行動の繰り返しからは何も生まれてこないことも分からせなければならない。指示する側とされる側に発生するこの悪循環を断ち切っていくために必要となるのが職場マネジメントのコミュニケーション能力に他ならない。コミュニケーション能力とは単に正しい伝達が問われるだけではなく、他者を動かしていく能力を含んでいるからだ。
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