2014年01月27日号
当然のことながら企業組織においては、それぞれの職位によって果たすべき役割が存在している。ところが、各職位の者がその果たすべき役割を曖昧にさせて、指示・命令系統が混乱することが往々に発生する。
その原因は一重に自らが果たす役割について、無自覚・無頓着に日常業務をこなしてしまうケースがあるからだ。例えば上司の指示通りに業務行動をとらない部下、あるいはできない部下がいるとする。こうした部下に「あいつは何をやってもダメだ」と、あきらめて「いちいち教えるくらいなら、自分でやったほうが早い」との思いから自分でやってしまう上司がいる。
また、注意や指摘をすることにより、「職場の雰囲気を害するのではないか」と思い込み、部下の悪しき行動を「見て見ぬふり」を決め込む管理職もいる。
確かに、“今のことだけ”を考えるのであれば、こうした上司は一時的に仕事が捗り職場の平穏さも保たれるかもしれない。そして上司としては余計なストレスや部下に対するイライラ感も解消されるだろう。しかし、これはあくまでも一時なものに過ぎず、上司の保身の表れに他ならない。こうした行為を続けているといつしか、その上司は自ら仕事を抱え込み「自分だけが忙しい」という自己満足や部下を顧みない“事なかれ主義”で終わってしまうことになる。
さらに高じると歪んだ自己中心で独善的な思いに駆られるようになり、時には部下のみならず周りに対して“排除の論理”を振りかざしかねない。その行き着く先は、独りよがりな仕事スタイルに陥るということだ。
仮に能力が優れている者であっても一人でできることには限界があるものだ。企業が組織体として仕事をするのは、たとえ一人ひとりの構成員の能力が小さなものでも、集団で行動することにより、量、質、時間を含めて大きな力が発揮できることができるからだ。そこで管理者には個々人の職務能力と同時に、分業と協業のバランスを取り組織全体のパフォーマンス発揮に向けたコーディネートが必要になる。併せて、悪しき傾向が発生していると判断した場合には、速やかな対処が求められる。
こうした行動規範を取り続けることが管理職の役割である。組織を構成する一人ひとのポジションや職務における役割と責任が明確化されることで効率化も生まれるものだ。与えられた役割と責任の範疇で、それぞれのパフォーマンスを発揮することが、組織全体のパフォーマンスを向上させることになる。
管理職は自らも含めて個々の役割意識の徹底に努めなければならない。組織内に傍観者を増殖させてはならない。一人ひとりに役割意識が浸透すれば、現場で察知したビジネス環境の変化や問題に、素早く対応できる組織になる。
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