2013年02月11日号
一日の仕事や一週間の仕事の疲れを「仕事帰りの一杯」で癒すという風習は十分に理解できる。しかし、いまだに会社帰りに同僚と一杯やりながら、酒の量と比例して会社批判や上司批判のトーンが上がってくる人びとがいる。この種の人びとの特長は、「自分は一生懸命やっているのに…」「自分は毎日頑張っているが給料があがらない…」というもので、しまいには同じことをエンドレステープのように繰り返すことだ。
最も困るのは、「飲み会」に自分の後輩なども同席させ、最初は「お説教」から始まり、最後には会社や上司への愚痴に向かっていくパターンだ。ところで一昔前とは異なり、最近の若い社員の中には上司や先輩との酒席を厭わなくなっている者が増えてきた。ただし、それはあくまでも彼らが「上司や先輩から有益な情報やアドバイスが欲しい」と欲してのことだ。
この種の若手社員はひと世代前の若手社員と比較するならば貪欲に周囲から物事を吸収しようとする対人関係能力としての優秀さを秘めている。しかし、自らがその対象とはならないと判断した上司や先輩の誘いには応じない。
こうした優秀さを秘めた若手社員が「オレの若いころは…」式の場違いな「お説教」を受け、無為に上司や先輩の「愚痴」に付き合わされて、しまいには「割り勘」を求められたならば、身も蓋もないと思うのは当然だ。
ある調査によれば、この十数年で世帯当たりの平均年収は50万円も減少し、サラリーマンの「お小遣い」は半額になっている。当然、若い社員もこうした事情は承知している。従って、上司や先輩との「仕事帰りの一杯」を全て上司・先輩の奢りで済まそうなどと考えている者はいない。自ら「割り勘」による出費を覚悟しても上司や先輩の話を聴きたいと思うから同席するのである。問題なのは上司や先輩の側がこうした要望に応えうるだけの話や仕事の姿勢を堅持できているか否かだ。
おりしもこれからの季節は、新卒・中途に限らず新入社員が入社してくる時期だ。こうした時期だからこそ、決して若いとはいえない年ごろとなり、若手社員への範とならなければならない中堅社員の意識性が問われる。
中堅社員は一切の愚痴を若手社員の前で吐露してはならない。まして自分の会社の収益や利益性を考える(理解)することなく、「給料が安い…、頑張ってもあがらない…」などという愚痴を繰り返してもまったく意味がない。それは天に唾をするようなものだ。
今は「頑張れば何とかなる…」などと牧歌的な時代ではないということを自覚しなければならない。自分の給料をあげるための方策は一つしかない。それは、従来からの自分の仕事のやり方をかえて、会社の利益に貢献していくスタンスの堅持だ。
こうした自明の理を若手社員に対して明確に主張できなければ、永遠に愚痴を吐き続けるという悲しい末路が待っている。
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