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週刊Neue Fahne

2012年08月06日号

「大企業病」と「中小企業病」

 大企業に働く人びとに対して顕著に見られる弊害を世間一般では「大企業病」と総称していた。一言でいうと危機感の欠如というところだ。具体的には、責任所在の曖昧さや部門間の意思疎通の欠如、意思決定の遅さ、組織全般に広がる融通のなさ、一般の意識とかけ離れた自社のみに通用する「常識」での諸行動だ。
 もちろん働く人びとだけではなく、大企業組織の経営上の弊害行動も「大企業病」と揶揄されることがある。そこで、大企業はこの弊害克服に向けて社員意識の改善に取り組んできた。この過程で一人ひとりの「成果」を強調するあまり、逆に組織全体の活力を削いでしまったり、多岐な雇用形態の導入が偽装派遣など社会問題も発生させたりしているのも事実だ。
最近では「グロバール人材育成」という課題を掲げて、この克服に向けての取り組みが堅調になっているのだが、これは単に海外展開に向けた世界に通用する人材の育成というニュアンスが強く、先に触れた病根の根治とはズレているように思える。

 一方でこうした「大企業病」と総称される企業の「病魔」は、大企業にのみ発症するものではなく、中小企業をも蝕んでいるという認識が必要だ。とくに中小企業に働く人びとの中にある「中小企業だから…」という意識は「危機感」の欠如の最たるものだ。
 中小企業は経営者のオーナーの強い想いで創業されるのが一般的だ。従って当然ながら経営者に大きな権限が集中している。それ自体は決して悪いことではないのだが、得てして理論を否定した売上至上に走りがちになる傾向がある。創業の初期ではこうした傾向がなければ会社組織が発展しないのも当然だ。だが、往々にしてこの傾向が続くと社員の側に「経営者への過度な期待感」が発生して、しまいには「すべては経営者のいうことに従っていればよい」という意識が蔓延し始める。
 オーナー企業に限らず大企業の「冠」のついた関連会社や子会社で働く従業員にも往々にして、こうした意識は存在している。その結果として会社組織に次のような現象を生み出し始める。
・「最後は経営者(親会社)が決定するのだから…」という意識でいるために会議をやっても結論が出ない。また、自らに課せられた役割に対する認識が低い。
・「経営者(親会社)がすべて決定してくれる」と思い部門や個人の責任の所在が曖昧になってくる。
・「創業時からの慣習だから…」との理由で、非効率な仕事ぶりに誰も疑問を抱かない。

 これらは正に中小企業に働く人びとが、経営者にすべてを頼り切る「中小企業病」だ。同時に「大企業病」と「中小企業病」の病根は同じということだ。また、先に触れたように激しい国際競争にさらされている大企業は、従来型人材が機能不全を起こし始めている現実を捉えて、さまざまな意識変容を求めているが、この点の意識は中小企業には非常に弱く、まだまだ属人的なパワーに頼っている感が否めない。
 これからは自らの仕事スタイルを転換してこの病と一人ひとりが闘っていかなければ、会社の継続性が脅かされる。

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