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週刊Neue Fahne

2025年12月21日号

“属人化思考”という罠-3-属人化と組織変革の関係性

属人化の問題を論じる際、単なる業務効率化や生産性向上の文脈に矮小化して捉えるのは適切ではない。属人化は、組織変革を進める上で最大級の阻害要因であると同時に、変革そのものと不可分に結びついた構造的課題である。
  組織が現状を変えようとするとき、必ず既存のやり方や過去の成功体験に引き戻そうとする力が働く。その抵抗が最も強く顕在化するのが属人化された業務領域であり、「これは自分にしかできない」「前任者からこう引き継いだ」「この仕事はあの人の役割だ」といった固定観念が、変革に対する強固な壁として立ちはだかる。

  そもそも組織変革とは、業務の前提条件を問い直し、価値の源泉を再定義する行為である。しかし属人化された業務は、その前提が個人の経験や感覚に閉じているため、組織としての再設計を極めて困難にする。
  特に暗黙知への依存度が高い業務ほど、変革の障壁は大きくなる。これは単に業務を文書化すれば解決する問題ではない。個人が業務を手放し、組織に委ねられる状態をいかに設計するかという、構造的かつ心理的な問題を内包している。

  属人化と組織変革の関係性を考える上で、まず押さえるべき点は、属人化の解消が変革の出発点であると同時に、変革の成果でもあるということである。属人化を解きほぐす過程では、業務の可視化が進み、プロセスが整理され、意思決定の質と速度が向上する。これは変革を支える基盤となる。
  一方で、変革を進める中で業務が標準化され、役割が複線化されることで、結果として属人化が解消されていくケースも多い。両者は一方向の因果関係ではなく、相互に促進し合う循環的な関係にある。

  次に留意すべきは、属人化には一律に排除すべきものと、むしろ活かすべきものが存在する点である。付加価値に直結する専門性や創造性が求められる領域では、個人の裁量や独自性が高いほど価値が生まれる。この意味での属人化は、組織にとって競争力の源泉となり得る。
  しかし、基礎的業務や再現可能なプロセスまで属人化されている状態は、組織の柔軟性を奪い、変革に必要な体力を著しく低下させる。したがって組織変革においては、「属人化してよい業務」と「属人化してはならない業務」を明確に線引きすることが不可欠である。

  さらに、組織変革は制度やプロセスの問題であると同時に、人間の感情との闘いでもある。業務を手放せない背景には、大きく二つの要因が存在する。一つは育成の方法やスキルが確立されていないこと、もう一つは業務を奪われることへの恐怖である。後者は特に根深く、業務のブラックボックス化や不正の温床となる危険性すら孕む。
  管理職は、この恐怖心を避けて通るのではなく、評価指標の見直しや役割の再定義、心理的安全性の確保を通じて、個人が安心して業務をオープンにできる環境を整える責任を負う。

  属人化を解消し、変革へとつなげるための実践的手段としては、複数担当制の導入、スキルマップの運用、教わる側が主体となって行うマニュアル作成などが有効である。これらは単なる効率化施策ではなく、組織の学習能力そのものを高める仕組みである。
  多能工化が進み、メンバー同士が相互に業務を補完できる状態が整うことで、組織は変化に対して強靭になる。属人化の解消は、組織に変革する力を内在化させる行為なのである。

  結局のところ、組織変革とは属人化の壁をいかに乗り越えるかという問いに集約される。属人化を一概に悪とみなすのではなく、付加価値源として活かすべき部分と、基盤業務として徹底的に排すべき部分を見極め、そのバランスを取ることが重要である。この視点を持つ組織ほど、変革のスピードは加速し、継続的に成果を生み出す体質へと進化していく。

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